「性差別」「人種差別」「LGBT」……。
誰もが暮らしやすい社会を目指す動きや、社会的に弱い立場にある方々を支援する風潮が、近年急激に高まっていますよね。
しかし、そういった方達と日常的にお話したり、遊んだり、直接関わる機会って意外と少なくありませんか? 「障がい」もその一つだと思っています。
「子どもの頃関わったことあるけど今は……」という大人や、「そもそも関わったことないな」という若い世代の方もいらっしゃることでしょう。
そういった「社会的な距離」をイベントやエンタメを通じて近づけようと活動されているのが、今回のゲスト「NPO法人SUPLIFE」さんです。
SUPLIFEの経緯やエンタメの持つ力について、理事長である美保さんご自身の経験を振り返りながらたくさんお話して頂きましたので、ぜひお楽しみください。
(インタビュアー:人見尚汰)
~障害の有無と社会の分断~
○ではまず最初に、SUPLIFE設立の経緯を教えてください。
美保:きっかけはダウン症の次女かのんを出産したことでした。
かのんを出産した2日後に、医師から「ダウン症の可能性があります」と仮告知を受け、目の前が真っ暗になりました。激しい孤独感に押しつぶされそうになったことは、今でも忘れられません。
「あっちの世界に行ってしまったんだ」と葛藤する日々が1ヶ月ほど続いたのですが、その間、ダウン症のお子さんの日常を綴ったブログを始め、同じ境遇の方々と交流する機会が増えていき、冷静になっていく中で、ダウン症の幼なじみのことを思い出しました。
「なぜ、私は『あっちの世界へ行ってしまった』と思っているのか?」そこでやっと、この世が分断された社会だったと気づいたんです。
共に生きてきたはずの幼なじみは、いつの間にか私のそばにいない。大人になってから、障がいのある方たちと関わることがほとんどなくなっていることに気づき、ハッとしました。
それと同時に、自分自身、偏見もなかったけど興味もなかったんだということに気付かされましたね。
「分断」された部分を埋めるにはどうしたらいいのか。いてもたってもいられなくなり、「みんなで一緒に歌って踊ろう」というイベントをスタートしました。障がいのある子、ない子がエンタメを通して自然と知り合う場所があれば、大人になっても心の壁を作らないのではないか? 分断を生むことも少なくなるのでは? と思ったんですね。
「SUPLIFE」という名前は、元々ユニバーサルミュージックからシンガーとしてデビューしていた頃のチーム名で、「サプリメント」と生活の「ライフ」を合わせた造語です。
生活に癒しを、元気を。誰かのそばにいられるような、そんな思いでつけたチーム名をそのまま活動する際にも使いました。
~小さなところから伝えていく~
○具体的にどのような活動をされていますか?
美保:大きな活動としては「バディウォーク東京」というイベントを渋谷の代々木公園けやき並木開催し、短いスパンの活動としては歌とダンスのステージや、勉強会などのイベントを開催しています。
「バディウォーク東京」は、ダウン症のある人たちを知ってもらうために始まった、アメリカ発祥のチャリティーイベントです。SUPLIFEの一番大きな活動になりますが、元々は「アクセプションズ」というNPO法人が8年間継続してこられ、東北から九州、沖縄まで全国的に広がっています。
9年目となる今年からSUPLIFEがバトンを引き継ぎ運営させて頂くことになったのですが、ダウン症の啓発だけに留まらず、色んな立場の人と共に生きることを考え、発信していきたい、と願いを込めて「Buddy Walk Tokyo」に「for all」をつけ、開催する事になりました。
また、勉強会やオンラインイベントは月に1回のペースで開催しています。
――勉強会やイベントは当事者同士の交流ですか? それとも当事者じゃない方もいらっしゃるのでしょうか?
美保:どちらともですね。障がいのあるなし関係なく、みんな一緒になって考える機会を増やしていきたいと考えています。
ここ1年くらいはコロナの影響で開催できていないんですが、冒頭でも少しご説明させていただいた、障がいのある子ない子が集まって歌って踊る「みんなで一緒に歌って踊ろう」というエンタメイベントをリアルでは開催していました。この「みんなで一緒に歌って踊ろう」がSUPLIFEの原点なんですが、エンタメを通して自然と互いを知っていくなかで、大人になってからの心の壁をなくせたらと願い、活動しています。
――障がいのない子どもたちからの反響はいかがですか?
美保:2年前の話になりますが、「みんなで一緒にうたって踊ろう」に参加してくれたダンスチームが、障がいのある子ない子が同じ控え室だったんですね。
控室からリハーサル、本番と、一日ともに過ごした後、ある1人の小学生の子がお母さんの携帯を使って、
「最初は障がいのある子がたくさん来ると聞いて怖いなって思いました。でもみんなと1日過ごしたら、優しくて、笑顔が可愛いかったです。そして、私たちと何も変わらないなと思いました。貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました」
と私にわざわざ連絡をくれた子がいました。
怖いと思うのは知らないから。知ることが大切なんだということを、この時ハッキリとこの子から教えてもらえました。この子にとって貴重な経験だということを言葉にして伝えてもらったことで、私たちにとって大きな励みになりました。
月に一度、年に一度の交流さえもなかったら、この事を私たちもこの子も知る事ができなかった。大きくなくてもいいから「機会を作っていく」ことの大切さを知ることが出来ましたね。
――子供の頃に持ったイメージって大人になってからも残るでしょうし、いいイメージで終われるといいですよね。
美保:それには、大人のサポートも大切でしょうね。
例えば、ダウン症のある子がお友達を突然押してしまったとします。でもこれは、意地悪で押したわけではなく、手の感覚が少し鈍い部分があり、本人は強く押したつもりじゃない場合が多いのです。また、押すにも理由があったりします。
そんな時、周りにいる大人がダウン症のある子にお友達を押したらいけないことを伝える、押されて怖かったお友達に謝る。押されてしまった子にはその子の心のケアと、なぜダウン症のある子が強く押してしまうのかを説明する。
一つの例ではありますが、こういったことの繰り返しが大切かなぁと思います。
そして、子どもたちだけで解決していく事も大切になると思います。
サポートしたり、見守ったり。
これは障がいのあるなし関係なく、大切なことではありますね。
~「エンタメ」と「共生社会」~
○活動する上で意識していることや、大切にしていることはありますか?
美保:障がいのあるなし関係なく楽しめるイベント運営を心がけています。
そして「心も体も安心して参加できる」これに尽きます。
私が子どもの頃に共に過ごした障がいのある子たちって、それはそれはめちゃくちゃで、大変な事も多かったけど、今思えば最高に楽しい時間でした。そして、めちゃくちゃなのも何もかも「当たり前」だった。それこそ子どもの頃に自然と関われた事が、今の私を作ってくれています。
でも、障がいのある方と過ごせる時間ってものすごく限られています。それが今の社会の現状で。だからこそSUPLIFEのイベントでは、「違い」に触れながら、楽しい思い出を作っていって欲しいですね。
――その「楽しい」を作る上で美保さんにとって歌とダンスがしっくりきた、という感じでしょうか?
美保:そうですね。音楽とかダンスのいいところって、いろんな受け取り方が出来るところだと思っています。言葉にしちゃうとその言葉の意味に縛られてしまう。でも、歌やダンスには「こうだ」っていう正解や不正解がない。自分だけの捉え方できる。そういった「エンタメ」を通して互いを知り、共生社会について考えるきっかけになったらいいなと思っています。
NPO法人SUPLIFEさんの情報はこちらから
https://suplife.or.jp/
【NPO法人SUPLIFEさんとのイベント〜Gift as SDGs第2弾】
Live配信 ver:5月21日(金)22時~22時30分
https://fb.me/e/3P6V0iGL4
Dialogue ver:6月7日(月)20時~22時
https://fb.me/e/1qZN9VIwt