「あなたは幸せですか?」
そう問われた時、あなたならどう答えますか?
「幸せです!」「充実しています!」と前向きに答える方がいらっしゃれば、悩みや問題を抱え「今はちょっと……」と答える方もいらっしゃるかと思います。
この度インタビューさせて頂いた『ゆるん』さんは、そんなすべての女性がイキイキと生きられる社会を目指し、時に明るく、時にゆる~く活動されているNPO法人です。
なぜ活動しようと思ったのか? 実際何をしているのか?
『ゆるん』さんの原点と今について、理事長 志水さんと副理事 高木さんに伺ってまいりましたので、どうぞご覧ください!
(インタビュアー:人見尚汰)
◇女性たちの相談窓口を目指して◇
人見:まず最初に、『ゆるん』設立に至った経緯を教えてください。
高木:いろんな女性を元気にできる場所を作りたい、と思ったのがきっかけです。
元々私自身がDV被害者という経緯もあり、同じような境遇の方たちへの支援活動をしていました。その活動は3年ほどでやめてしまったんですが、その後、シェルター(DV被害を受けた女性やその子どものための一時的な避難所)を出た後の支援が充実していないことや、DV以外の悩みや問題を抱えた女性も多いということを知り、特にそういった悩みを抱えた女性たちが相談窓口にすらたどり着けていないという現状を知った時、もう一度支援活動をしたいという思いがこみ上げてきました。
その上で「どうしたら届けられるか」と考えた時、楽しく気軽に遊びに来てもらえる場所がいいのでは? と思ったんですね。楽しい場を通じてリフレッシュしたり、一歩引いて見ることで暴力や虐待という自身の状況に気付ける。そんな、元気になれる場所、自分を表現できる場所、支援が必要な人には支援を届けられる場所として、『ゆるん』が設立されました。
――DVがスタートだったんですね。今もDV支援をベースに活動しているのでしょうか?
高木:DV被害を機に離婚した女性、いわゆる「サバイバー」と呼ばれる方が集まって来やすいので、DVのことを表に出す機会は多いですね。離婚はしたけどきっちり解決までは至っていない方を弁護士や行政につなぐことも多いです。でも、うつとか家庭環境とか、個々人が抱える悩みの相談を受けることもありますよ。
――『ゆるん』自身が相談窓口的な存在である、ということでしょうか?
高木:そうですね。私たちは「一点に絞らず、間口を広く」というスタンスでやってるので、「DV被害者向けの団体です」「虐待経験者向けの団体です」といった打ち出し方はしていないです。とにかく手広く、そして必要な方に必要なことを届けられるよう取り組んでいます。
◇自立していくための支援◇
人見:では、具体的な活動内容について教えてください。
志水:今説明させて頂いた「相談窓口」に、「性教育」「ワークショップ」を加えた3本柱で活動しています。
「性教育」についてですが、DVを始め、被害に遭っている女性は様々いらっしゃるのですが、その裏には女性自身がDVの判断基準を持っていなかったり、やっていいことと悪いことの線引きが出来ていない男性の存在など、多くの要因が考えられます。そういった被害から身を守るための知識や自尊心を子どものうちから身に付けて欲しいと思い、お母さんたちから子どもたちへ伝えていけるよう、性教育の場を設けています。
続いて「ワークショップ」ですが、おやつ会や語る会といった気軽に参加出来るものから、年に1、2回催すステージを使った発表会など、大小様々な会を実施しています。こういった会を通じて、女性自身が自分のことを伝えていく、または表現していけることを目指しています。
現在はこの3つをメインに活動していますが、今後は『ゆるん』に来られた方への就職支援にも取り組んでいけたらと考えています。
――自立していくための支援、ということですね。
志水:そうですね。解決したからと言っても心の傷が完全に治るとは限らず、またいつフラッシュバックしてくるかもわかりません。ですので、解決後のフォローまで関わりたいんです。相談・解決・自立、「入口から出口まで」といった感じで。
――お話を聞いていると、『ゆるん』に来られる方は何かしらの悩みや問題を抱えられた方が多いように感じたのですが……。
高木:そんなこともないですよ!イベント等を楽しみに来られる方もいらっしゃいますよ。
志水:年齢層で言うと、30代~60代の方が多いですね。ワークショップのテーマによってはもっと上の方も参加してくださります。職業で言うと、主婦、パート、個人事業主、サービス業など様々ですが、FacebookやinstagramなどのSNSを使って発信している都合上、普段からSNSをよく使用している方に来て頂いているイメージですね。
――女性をターゲットに情報発信されているんでしょうか?
高木:メッセージは女性に届けていきたいのですが、関わってくれる方は男性女性関係なくいろんな方に、と考えています。特にDV被害者の方って男性に対するイメージが良くなかったりするんですが、それを変えようとした時、イベントなどでフラットに関わってくれる男性が居てくださると「こういう男性もいるんだ」と気付くきっかけにもなるんですよね。
――なるほど。そう考えると、男性の存在も大きいですね。
悩みや問題を抱えられていた方たちは、『ゆるん』を経てどのように変化していかれましたか?
高木:私は特に被害を受けた方のお話を伺うことが多いんですが、『ゆるん』と関わって以降家庭環境が良好になった、という声をいただいたりしますね。最近だと、私たちがお誘いしたイベントをきっかけに夫婦仲が改善した、というご報告を頂きました。
志水:自分の気持ちが安定すると、今まで気になっていたことでも聞き流せるようになったりするみたいなんですよね。
高木:他にも精神的にしんどさを抱えていた方が、自分のやりたいことを見つけて進んで行ったり、おやつ会や発表会を通じて横のつながりを作って、表現の場を広げていった方などもいらっしゃいます。
――『ゆるん』の手を離れ、自立されたんですね。
高木:知らないところへね(笑)
志水:「入口から出口まで」と言いましたが、こういう形もありだと思っています。
――『ゆるん』にとっての理想は、「女性たちが自立していくこと」なんですね。
高木:そうです。私たちは、卒業してもらうこと、私たちの手を離れてやりたいことをやれるようになること、を目標にしていますので。
志水:自分の経験を生かして、『ゆるん』の活動をサポートしてくれたりすると嬉しいですね。
――『ゆるん』に戻って活動される方もいらっしゃるんですか?
高木:最近増えたましたね。以前にDV被害を受けた方が「自分もそういう支援をしたい」と積極的に手伝ってくれたり、大きいイベントのお手伝いにボランティアとして参加してくださる方もいらっしゃいます。
後編へ続く