今回は、F,Lab第4期で初めて取り入れる「組織運営」についての講座をご担当いただくアカラ・クリエイト代表の井上健一郎先生と対談しました。
GiftではNPOの方々に、F,Labを通じ「会計」「寄付」について講座を届けてきましたが、取り組みを続ける中で、各団体さんが組織としてしっかりとチームができている状態で受講してほしいという思いが出てきました。そして今回、井上先生にお声がけしてF,Lab内の講座参加が実現しました。
井上先生には4月6日(木)、4月20日(木)の2回、組織についての講座を担当していただきます。
対談の中では、変化の大きい時代と言われる現代で、NPOがどのように組織運営をしていけばいいか、お話しを伺いました。
F,Labに申し込む井上 健一郎先生プロフィール
アカラ•クリエイト代表
慶応大学卒。CBSソニー(現 ソニーミュジックエンタテインメント)に入社。レコード会社のバリューチェーンである企画から販売まですべてを経験。
その後、2006年に企業の人材開発、組織運営のサポートを目指し退職。
日本経営教育研究所(株)に参加し、組織化推進型評価制度「LADDERS」の開発と普及、採用リスクを回避するための支援、リーダーの育成プログラムの推進などを手掛けた。
2010年に独立し、創造性の時代の自由闊達な組織作りを目指す企業のサポートに特化して活動中。
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NPO側が参加者に求めることを明確にすることから
小山:今回、私たちのお願いを受けていただいた理由はありますか?
井上:これまで実際に人事制度、人材開発、文化づくりというテーマで企業に入っていくと、一般企業の場合は「評価」ということに繋がっていきます。評価が大事ということになり、それによって給与が決まったりしていく。最終的には処遇と連動して、組織の制度や文化作りが語られることが多いです。ただNPOの場合は、その処遇と直結させて評価を語ることの出来ない組織だと思います。
一般的な組織論をベースに営利企業が活動していく中で具体的に何をしていくのかを落とし込みをしていきます。NPOが対象となったときに、どう落とし込みをしていけばよいのか興味もありますし、私自身にとってもチャレンジだと思って引き受けました。
小山:一般企業であれば「昇給」という形で評価ができますが、NPOの場合はそもそもがボランティアとしての関わりだったり、給料をしっかり支払うことができない状態です。モチベーション高いまま、組織に関わり続けることが難しい組織だと感じています。「ボランティアなのにここまでやるんですか?」と感じる方もいるし、今はボランティア状態だけど立ち上げ段階だからやろうと感じている人もいます。
これはNPOならではの課題で、どのタイミングで給料を出すのか、悩まれているNPO経営者の方も多いです。給料じゃない部分でどう評価していくのか、どうモチベーションを維持していくのかということが課題だと思っています。
井上:評価制度を作ると、会社ごとに違うものになります。それは、会社ごとに求める人材像が違うから、です。なので、まずは求める人材像を語らないといけません。この組織を進めるにあたって、「こういう人に参加してほしい」ということを整理する必要があります。
NPOの場合でも、ボランティアの人たちは団体から「10」のリクエストがあるというのは知っておいてほしい。そのうち「3」を担うということでもちろんいいけれど、全体として「10」があると知っておいてもらう。そして、10のうちの3をやっていることを認めているよ、ということがどこかで表現する。きっちりと評価するためにも、どういうことを求めているのか、を表現していくことが必要かと思います。
NPOが組織として評価をどう作っていくかは、今回F,Labの講座テーマとしてあるかもしれないですね。
小山:NPOの場合はその団体が取り組む「テーマ」に共感することで人は集まってきますが、「共感してくれている人」と「求める人物像」というのは必ずしも一致しないですね。なので求めることの全体像=「10」を示していくことで、参加した人がそのうちどこ部分を担うのかを選ぶことができると、確かに関わりやすくなるのではと思います。
NPOが持つ「社会性」は注目されてるが、関わり方のデザインが必要
井上:今、いわゆるZ世代は企業活動がどれだけ社会性を持っているかに興味を持っていると言われています。社会的存在意義が非常に大事な時代になってきた。
そんな時代変化の中で、NPOは社会的な活動テーマがはっきりしているので、そういう意味で人が集まってくる力を持っていると思います。
「なぜそのテーマに取り組んでいるのか」というWhyの部分に共感する、そしてさらにそのWhyの部分を「どんな風に解決するのか」というHowの部分に、人が関わってくると思うんですよね。
なのでHOWの部分で一連の流れを整えて、分かりやすくしておかないと、参加者が自分が何をやるべきかという理解度が高まらない可能性があります。
小山:実際、Giftもフリースクール「ころころ」を運営していますが、私たちとしては「子どもたちが安心して、やりたいことを見つけて「自主的に」いろいろなことをとりくむ」ことを重視しています。
活動に参加される方の中には「勉強を教えたい!」という思いでくる人、子どもと遊びたいと思ってくる人など様々な人が来られるので、自分たちの意図を伝えていかないといけない場面があります。
団体ごとにテーマも違うので、人物像を明確にしておかないといけないなと今話を聞いていて思いました。
井上:NPOの場合、メンバーとして参加する人たちが何を得られるかというと「学び」だと思います。そこに参加すると。こんなことが学べそうだ、その「こんなこと」が組織が大事にしていることなのかもしれませんね。
例えばGiftさんの場合だと「子どもたちが安心する居場所作り」が学べるね、みたいなこともある種の報酬になると思うのでそんなことも考えられるといいと思います。これも方法の中の1つだと思いますが、そのほかにもNPOの組織運営も未開拓な分野ではあるので、皆さんと一緒に「こんなことできるかもね」と深めていけるといいなと思っています。
社会貢献が経済社会の中で回っていく、そこをGiftさんは一生懸命考えていらっしゃるし、そういうふうにお金的にも回っていくような活動に高めていく、そのための組織を作っていくことが今テーマなんでしょうね。
正解のない社会で、考える力をつけていく
小山:井上さんが組織に関わる上で、今後の夢はありますか?
井上:組織に関わらず、今大きなテーマとして「答えのない課題にどれだけ真剣に向き合って、自分で考えて、答えらしきものを探していけるか」。正解を見つけるのではなく、正解を自分で作り出す思考が、これからますます大事になってくると思っています。世の中全体がそうなってほしいと考えている。学生さんたちにももっとそちらの力に注目してほしいし、企業も考える力を見極めることに注力してほしいと思っています。
研修や教育的な場に参加する時にも、「考える力」というのは大きなテーマになるので広めていきたいと思っています。
小山:正しいかわからないけど、とりあえず「これを一旦の答えとして、やっていこう!」と考えながら動くのはすごく大事だと思います。
井上:常に試行錯誤の時代なのだと思います、一人一人が考える力が必要だと思います。
実際に企業支援をやってみるとその考える力が「弱い」なと思います。企業としても、個人としても、考える力の弱さに「大丈夫か日本?」と思ってしまう状況もあります。
小山:正しいかわからないけど、とりあえず「これを一旦の答えとして、やっていこう!」と考えながら動くのはすごく大事だと思います。自分で考えることを遠慮してしまっていたり、「こんな風に思われたらと…」と周りに気を遣ってしまう。そうして、考える力が弱まっているというのもあるんだろうな思います。
Giftの活動もどうなっていくかはわかりませんが、考えながら取り組んでもいます。やってみないことにはわからないですし、間違っていたら違う考えに気づき、変えていけるようになればいいなと思っています。
井上:Giftさん自体もF,Labを3期実施されてきた中で、「組織」というテーマが必要だと感じられて、今回取り組んでみようと思われていますよね。やってみて、うまくいかないこともあるかもしれませんがじゃあこうやろう!とアイデアにつながっていきます。
私も今回、一生懸命試行錯誤しながら、お付き合いしていこうと思っています。
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