心細さに寄り添い、スタートラインに立つ準備を共に。〜一般社団法人later on〜

どんなに大きく、活動を広げている団体でも、初めは「立ち上げる」瞬間があり、「法人化する」タイミングがある。

「私は法人化を前にして、やっぱりどこかすごく心細かったんです。」

そう語るのは、「『今』を生きる子ども・若者たちが明日を想像する社会に」をビジョンに掲げて、子ども・若者の居場所作りの活動をされている、一般社団法人「later on」代表の山中葉月(やまなかはづき)さん。

later on が2025年3月に一般社団法人化するにあたって、法人化のサポートをGiftがさせていただきました。
今回はそんな法人化までにどのような道のりがあったのかを、later on代表の山中さんと、Giftの遠藤に話を伺いました。

執筆:西村征輝

 


相談できる大人が当時の兄にもいればよかった。

 

–どうしてlater onを立ち上げたのでしょうか?

山中さん(以下山中):私たちは2024年11月から、地域での居場所作りの活動をしていますが、その背景の一つには、統合失調症を患っている私の兄が関係しています。兄は高校生の頃、進路選択の際に自分の言いたいことが言えずに、「家族が望んでいる選択肢を選ばなければ」と思っていたそうです。その話を大人になってから聞いたのですが、当時の兄に相談できる大人がいれば、色々な選択肢を知ることが出来たのではないかと思いました。

もちろん選択肢を知ったとしても、実際にそれを選べるかはわかりませんが、背中を押してくれる存在を身近に感じられる経験は、大切だったのではないかと思います。そう思うと、高校の3年間がいかに大事な時期かと感じたので、高校生世代向けの居場所を、週に1回放課後の時間にボランティアベースで開き続けています。


–学校内でも居場所作りをされていますが、どのような活動をされているのでしょうか?

山中:箕面市内の高校で、昼休みと放課後に生徒向けの居場所を週に1回開いて、1日におよそ20人から30人の生徒が来てくれています。ただ楽しく過ごしてもらうことを1番の目的にはしていますが、中には家庭環境がしんどい状態にある生徒もいるので、生徒の意向を尊重しながら先生方と相談をしています。

私たちが開いている地域の居場所や、他の社会資源に繋ぐなど、高校卒業後も見据えた支援を行っています。9月からは高槻市内の高校でも校内居場所を開いています。

–団体の立ち上げから1年も経たないうちに、地域での居場所作りに加えて、2つの高校でも居場所を開いているのは、すごいスピード感だと思うのですが、そのパワーはどこから来るのでしょうか?

山中:私の場合は衝動的な部分もあったと思います。「やりたい!今だ!」と思ったタイミングと、応援してくれる人たちとの出会いが重なり続けて、物事が進んでいきました。

 

 

子どもたちが来てくれているこの居場所を守りたい。


–団体の立ち上げから法人化までが早かったと思うのですが、どのような背景があったのでしょうか?

山中:箕面市内の校内居場所は、以前は別の法人が運営をしていたのですが、later onとして引き継ぐことになり、そのためには、法人格が必要だったので、急いで一般社団法人にすることにしました。

–突然、法人化の必要に迫られたとなると、気持ちが慌てそうですが…

山中:法人を作ることがどれぐらいの責任を負うことなのかもわからなかったのですが、とにかく私は、子どもたちが来てくれているこの居場所を守りたい気持ちが先行していて、そのためには法人化が必要だと思っていました。

加えて、同じ時期に、高槻市からも、ヤングケアラーピアサポート事業の公募が始まり、このスピード感で事業が拡がっていくことには不安も感じていました。


–どんな不安を感じていたのですか?

山中:later onとして、行政の委託事業・自主事業・補助金事業などのバランスをどう保ちながら運営していくのかについて、考える必要があると感じていました。行政と関わったことのある子ども・若者たちの中には、役所に対して複雑な気持ちを持っている子達もいます。そうした不安な気持ちに寄り添いながらも、「行政の人たちも皆のことを考えてくれているよ」と、押し付けることなく伝えたい気持ちも一方でありました。

だからこそ、行政の方々と何度も打ち合わせをさせていただき、ヤングケアラー向けの事業ではあるけれど、間口は広げたいんだということを訴え続けました。そのやり取りの中で、自分のやりたいことが行政とも手繋ぎで出来そうだと思い、最初は事業を遂行していくことに不安を感じていましたが、最終的には高槻市からの委託も受けようという気持ちになりました。

定款作りでは、こだわりと想いを、誰が見てもわかる言葉に。


–ここからはlater onの一般社団法人化のサポートをさせていただいた、Giftの遠藤にも話を聞きたいと思います。
今回は委託事業を引き継ぐために、時間がない中でのサポートだったと思いますが、初動でどのようなことを意識していましたか?

遠藤:一般社団法人の設立には2つの壁があります。1つ目は、法人のルールとなる定款を作り、公証役場でお墨付きをいただく定款認証という手続き。2つ目は、その後に法務局に申請して行う法人設立の登記手続き。これらの手続きには一定の期間がかかることがハッキリしていたので、とにかくスピード重視で準備を進めました。そして、定款作りは法人の想いが現れる大事な部分なので、丁寧に進めていきました。


–定款を作る上では、どのようなことが大事になってくるのですか?

遠藤:定款では、法人の事業とその目的について書く必要があります。もちろん山中さんのこだわりと想いを込めていくのですが、一方で誰が見ても同じように読み取ってもらえる言葉にしなければいけません。そのバランスを取るために、山中さんのイメージを言葉にしてもらい、それを一般的に伝わる言い回しに変えるというやり取りを、何度か繰り返しながら調整していました。


–具体的にどのようなやり取りがされていたのですか?

遠藤:目的について書かれた定款の第3条を例に話させてもらいます。

”当法人は、子ども・若者が、自ら抱える不全感や閉塞感を発し、周囲の人々がそれらに寄り添うことのできる関係性・地域づくりを行うことにより、子ども・若者及びその家族地域で安心して生活ができることに貢献することを目的とする。”

 

元々は、「もやもやとした言葉にできない気持ちやしんどさを吐き出せるようにしたい」という山中さんの想いがあり、それを「自ら抱える不全感や閉塞感を発し」と翻訳させてもらいました。また、そうして吐き出されたものをすぐに解決するという姿勢ではなく、「自然に受け止める」というニュアンスから、「寄り添う」と表現しています。

この辺りは僕も実際に居場所に足を運ばせてもらい、そこで感じた雰囲気を思い浮かべながら言葉にしていきました。さらに、山中さんの話を伺っていると、子ども達への支援を目の前の場だけではなく、より広い範囲で見ている感覚も伝わってきたので、「家族」や「地域」という言葉も入れています。

他には、事業について書かれた定款の第4条の⑵も印象的でした。

”子ども・若者がつぶやく言葉ややり場のない気持ちに対し、周囲が関心を寄せ合うことができる空間づくりを目的とした居場所事業”

 

ここはものすごく悩みました。これ以上一般化してしまうと、山中さんの持つ熱量が奪われてしまい、自分達の言葉でなくなってしまう可能性があると思いました。

–1つ1つ、丁寧なやり取りを積み重ねながら、定款を作ってきたことが伝わります。自分が大切にしたい想いを、定款のような固い言葉に翻訳した時、自分の想いとズレてしまうこともあると思うのですが、山中さんは定款作りを通して、どのように感じましたか?

山中:想いを持って活動をするのは現場レベルで十分に出来ている。あとはそれをどう言葉にして周囲に伝えていくのかが課題だと思っていました。今回の定款作りでは、自分の想いを誰が聞いても、ある程度同じように解釈をしてくれる言葉を選ばなければいけないと改めて感じました。

だからこそ、こうして私の想いをまとめてくれた定款を見ると、「何もズレていない、これなんだ。」と思います。定款に書かれたことを大切に、ずっと変わりなくやっていると、今でも思えています。

遠藤:そう言ってもらえると嬉しいですね。

守りたい気持ちと共に、使命感が強くなっていった。

–様々な手続きを経て、一般社団法人化を終えた際、どのように感じましたか?

山中:こんなにも応援してくれる人がいることが驚きでした。子どもたちには普段「困った時には相談してね」と話しますが、私自身は子ども時代に助けてほしいとは言えませんでした。大人になってから、自分がやりたいと思ったことを少しずつ声に出してみると、協力をしてくれる人が現れて、数珠つなぎで色々な人との出会いが生まれていき、心から感謝することがたくさん増えたなと、法人を立ち上げて思います。

遠藤:私は法人設立記念パーティーに招待していただいたのですが、たくさんの方が集まっていて、地域の中で注目され応援されているのが印象的でした。皆さんのワクワク感も伝わってきて、そんな団体の立ち上げを手伝うことが出来てよかったと、すごく嬉しい気持ちになりました。


–山中さんは法人化をする前と後で何が一番大きく変わったと思いますか?

山中:「守りたい」という気持ちです。活動も、子どもたちの居場所も、スタッフのことも。ボランティア団体としてやっていた時以上に、守っていきたい気持ちが強くなっています。期待をしてくれている人たちがいることを実感するうちに、皆さんと一緒に手を繋いで頑張っていきたい気持ちが強くなりました。責任感なのか、もう少し強く言うと使命感のようなものが、私の中では強くなっていったかなと思います。


スタートラインに立つまでの準備をとても丁寧にしてもらえた。

 

–今回、法人化のサポートを受けてみてどうでしたか?

山中:私はわからないことが本当にたくさんあったんですけど、遠藤さんはとにかく受け止めてくれました。


–いわゆる何がわからないかもわからない状態だった…?

山中:そうです。1つ解決したと思えば、そこからまた新たな疑問が出てくる。でも遠藤さんは、「慣れない手続きなのでわからなくて当たり前ですよ」と受け止めてくれて、私のペースに合わせてくれていると感じました。私が本業の合間で法人化に向けた作業をしていることにも気遣ってくださって、だからこそ焦る気持ちがなくなりました。

–それだけ安心感があった…

山中:ありましたね。遠藤さんのこともすごく信用することが出来ましたし、私を焦らせずに1つ1つ丁寧に教えてくださったことで、法人を設立したことを後悔せずに済んだなと思います。

–最後に、Giftのサポートはどんなところに価値があると思いますか?

山中:私は法人化を前にして、やっぱりどこかすごく心細かったんです。本当にこのまま自分が会社の代表として、会社を守って維持することが出来るのだろうか?と、運営面でとても不安でした。だからこそ、遠藤さんに相談に乗ってもらえて安心しました。

もしも相談できないままだったら、不安定なまま、やっぱり自分には出来ないんだとか、法人を立ち上げたことを後悔して、結局は子どもたちの居場所を作れなかったかもしれません。スタートラインに立つまでの準備をとても丁寧にしてもらえたなと思います。

–本日はありがとうございました。

 

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