【F,Labとは? – F,Labの流れ】
――まず初めに、「F,Lab」とは一体何なのか、改めて教えていただけますか?
まゆ:「F,Lab」とは、NPOが会計や資金調達を自ら賄えるようになるためのトレーニング講座です。3Stage – 9Stepからなる構成で、Stage1では「資金計画」、Stage2では「寄付を集める・受けるための準備」、Stage3では「集めた資金の効果を最大化」をそれぞれ大枠のテーマとしています。
――ありがとうございます。では「F,Lab」の詳細な内容、講座の流れを教えてください。
まゆ:はい。流れとしましては、各Stage・Step毎に「動画コンテンツ」→「ホームワーク」の順で取り組んでいただき、これがベースとなります。また2週に1回の「トレーニング」と、月に1回の「個別相談」もご用意しております。
隆太朗:きちっとペースが決まっているのは「トレーニング」と「個別相談」だけで、ほかは特に設けておりません。それぞれのペースで学ぶことが大切だと考えておりますので、「動画コンテンツ」の視聴や「ホームワーク」の提出タイミングは各団体にお任せしております。
〈動画コンテンツ〉
……Youtube上にアップロードされた「F,Lab」のメイン教材。まずはこちらをご視聴いただき、その動画に合わせたホームワークに取り組んでいただきます。
――こちらのコンテンツは、見たいときにいくらでも見られるものなのでしょうか?
まゆ:Step1のホームワークが終わるとStep2の動画が見れる……といったように、次に進むためにはホームワークをクリアしていただく必要があります。クリア済みや今現在取り組まれているステップの動画はいつ、何度見ていただいてもOKです。
隆太朗:「これが出来ないと次は見せません」というよりは、「Step1がクリア出来たらStep2に進める」と、ゲーム感覚で前向きに取り組んでいただけたらと。
〈ホームワーク〉
……各ステージ、各ステップ毎にgoogleドキュメントで作成したワークシートを用意しており、動画を見た後そちらに取り組んでいただきます。例えば[Stage1-Step1]ですと、どれだけお給料が欲しいか、何がいくら足りていないかなど、具体的な金額を団体内で議論および記入する、「本音の計算書」をご用意しております。
〈トレーニング〉
……動画コンテンツの内容習得を目的として、2週間に一度、一回2時間のワーク・練習に取り組んでいただきます。第2週に会計のトレーニング、第4週に寄付のトレーニング、第6週に会計のトレーニングと、2週ごとにStage1とStage2のトレーニングを繰り返します。例えば、会計処理や決算書の読み取り方、実際に「寄付をください」と声に出して言ってみるなど、実戦を意識した様々な練習をご用意しております。
――トレーニングは他の団体さんと合同で行うと伺いましたが、評判はいかがですか?
隆太朗:かなり好評をいただいております。団体さん同士お互いに刺激や励みになるみたいですよ。
〈個別相談〉
……各団体、月一回個別相談の機会を設けています。基本的に何を話してもらっても構わない、フリートークの場となっています。
――個別相談では、これまでどのようなお話をされましたか?
まゆ:「設立の登記定款見てください」などのお願いから、「会計ソフトは何がいいですか?」といった相談まで、実に様々です。
隆太朗:中には団体内の揉め事に入って解決までフォローさせて頂いたこともあるんですが、我々が問題を解決してしまうと団体としての成長が難しいと思っています。というのも、自分たちの力で揉め事を乗り越えることで団体は大きく成長できるんです。長く活動する中で、自分たちの問題は自分たちで解決できるようになっていたほうがいいですから、たとえ自由とは言え、そういった時間の使い方はあまり推奨しておりません。ただ、サポートがあることで前に進められるようになるのも確かですので、そこは遠慮せずにお知らせくだされば嬉しいですね。
【各Stage・Stepのテーマ】
まゆ:続いて、こちらが各Stage・Stepの概要になります。
【Stage1 会計】
[Stage1-Step1] ~会計・仕訳の方法、書類作成~
……「決算書作成」を最終ゴールとし、会計処理における考え方や書類作成上のつまづきやすいポイントなどを抑えつつ、レクチャー&トレーニングに励んでいただきます。
[Stage1-Step2] ~経営分析~
……団体の抱える課題や会計処理の間違い探しなど、各団体の経営分析を行います。経費として計上すべきお金を自腹で賄うなど、経費計算をおざなりにしてしまっている団体も少なくありませんので、本当はいくら必要なのか、書面と実態の間で生まれるギャップの解消を目指します。
[Stage1-Step3] ~資金計画~
……Step2での分析結果を踏まえ、経営ビジョンや団体のミッションに沿った資金計画を構築していきます。人件費や諸費用など、必要資金の過不足を算出したり、今後の投資や資金配分までを見据えた長期的な資金計画を練り上げます。
【Stage2 資金調達】
[Stage2-Step1] ~組織デザイン~
……銀行口座や振込先の作成、目標額の設定、どんなメッセージを出すかなど、ファンドレイジングのために必要な組織デザインを行います。お伝えしたいメッセージは「『ファンドレイジング』とは個人の能力ではなく、組織の仕組みである」です。
[Stage2-Step2] ~寄付コミュニケーション~
……どのようなメッセージだと寄付を受けやすくなるのか、どういうコミュニケーションが必要とされるのかを一緒に考えていきます。Stage1でまとめた資金計画を元に寄付の目標額を設定し、広報、もしくは直接声をかけながら、寄付を募るための方法を模索します。
[Stage2-Step3] ~キャンペーン~
……クラウドファンディングに近いイメージで、実践を想定した短期間集中型の寄付キャンペーンを行います。経営資金や意識を一旦集中させることで生じる生産性の向上や、短期間で成果を生み出す感覚を実際に感じていただきます。
隆太朗:Stage3は、正直なところまだ構想段階なんですが、確実に形にしたいと考えておりますのでこちらもご説明させていただきます。
Stage1で「会計」を、Stage2で「資金調達」をそれぞれ学び、財務の透明性、そしてお金の集め方について深く落とし込めているはずです。ここまでくればお金が回る状態は作り出せているんですが、まだ団体の価値を最大化できているわけではないんですよ。人・金といった資源をどのように使っていくか考え、その上でしっかりと成果を出し、寄付したいと思える団体になる、そのための最後の仕上げとしてStege3を用意しております。
【Stage3 業務改善】
[Stage3-Step1]業務改善
このStepでは、業務の無駄やロスに焦点を当てます。役割分担が出来ていないことで手が回らなかったり、逆に割り振ったことで一人に依存し仕事が進まないなど、団体ごとで現場の齟齬は異なります。各団体の明確な業務フローやマニュアルの作成で業務を可視化し、人材という貴重なリソースを無駄なく使い切ることで、より高い生産性を目指します。
[Stage3-Step2]業務改革
Step1が「効率向上」だったのに対して、Step2は「新価値創造」がテーマとなります。その団体が願っている解決課題に対して成果を上げられる真新しい事業、プロジェクトを構築していきます。全く違うアプローチによって新しい価値を生み出し、団体の活動を1ランクグレードアップさせます。
隆太朗:簡単にまとめると、Step1は「団体の中身」のテコ入れであり、5人でやっていたことを3人、ないしは2人でできるようにする。一方、Step2は「団体の活動」をテコ入れし、5人のままでよりレベルの高い成果を創造する、といったところです。
[Stage3-Step3]マーケティング
SNSなどの広報媒体の発信の仕方やターゲット設定などをお伝えします。アクセス数や「いいね」が多くても、支持や寄付に繋がらなければあまり意味がないと私たちは考えています。どういった投稿、どういったSNSコミュニケーションがあれば寄付を集められるのか? 実際の寄付に繋がる導線を、このStepで一緒に考えていきます。
――「マーケティング」は最初にするイメージがあるのですが、最後に持ってきているのはどういった意図があるのでしょうか?
隆太朗:Step1、2をやり切れていないのにマーケティングだけ頑張ってもあんまり意味がないからですね。結局、成果の上がっていない団体を応援しようとは誰も思わないので、Stage1、Stage2でしっかり準備し、Stage3のStep1、2で力を蓄えることが必要なんです。
――なるほど。では、Stage3-Step3を終えた頃には、団体としてかなりの力が付いていると?
まゆ:そうですね。自分たちで会計から資金調達を行い、成果を最大化できている状態にあると思いますし、このような状態になって初めて、自分たちらしい活動を続けられていると考えています。
――最終的なイメージとしては、Stage3-Step3を終えた段階ではどうなるのでしょうか?
まゆ:自分たちで会計から資金調達を行い、成果を最大化できている状態です。このような状態になって初めて、自分たちらしい活動を続けて行くと考えています。
【ライター紹介】
人見尚汰(ひとみしょうた)
大学時代、所属先の人材教育系NPOで魅力的な大人と数多く出会い、書くこと、撮ることを通して人の魅力を伝える立場になることを志す。「みんなが知らない『実は良いもの』を知ってもらう」をモットーに、ライターや写真家として主に京都で活動中。