連載企画、団体インタビュー!
6回目を迎えた本企画。今回は、誰しもが自分自身を自由に表現できる世の中を目指して発信活動に取り組まれている「バリアフリーチャレンジ!」の代表、島本 昌浩さんをインタビューさせて頂きました。
設立に至った経緯に始まり、活動内容、島本さんの想いなど、バリアフリーチャレンジ! の「これまで」と「これから」をたっぷりと語っていただきましたので、じっくりとお楽しみください。
インタビュアー:人見 尚汰
インタビュイー:島本 昌浩
【沿革】 ~『自分の想いを発信していきたい』~
人見:それではまず、「バリアフリーチャレンジ!」設立の経緯を教えてください。
島本:きっかけは22歳の時に患った脳出血の後遺症により、障害者として人生を歩み始めたことです。日々生活する中で、自分と社会との間に認識のズレのようなものを感じたんですよね。
例えば、「若いのに大変ね」や「障害があるのに頑張ってますね」と、障害を前提に接してこられる方がいたんですが、自分としては障害のあるなし関係なくフラットに暮らしたいと考えていたので、「障害者だから」と身構えて接せられることに違和感を感じていました。
次第にこうした違和感や、自分の考えを発信したいという想いが強くなっていったその矢先、幸いなことにその当時リハビリを担当してくださっていた先生が「看護学校で授業を持ってるんだけど、僕の代わりに教壇に立ってみない?」と提案して下さり、講演という発信の機会をいただけました。
この講演、非常に多くの反響をいただきまして、自分の経験を伝えていくことにとても大きな意義を感じたんですよね。そこから行政書士の仕事と並行し、自分の想いや存在を表明していくための発信活動に取り組むようになりました。
-ありがとうございます。元々人前で話すことはお好きだったり?
島本:そうですね。学生時代はバンド活動をしていたり、社会人になってからは専門学校の講師だったりと、人前に立ったり目立つことが好きでした。
【活動内容】~誰もが自由に表現できる未来を~
人見:では、現在の活動内容を具体的に教えていただけますか?
島本:WEB上でのインタビュー記事の公開が主たる活動です。ライターである私たち自身の考えや経験をウェブ上で発信している他、障害者に限らずいろんな立場の方の生き方・生き様や、個々人の背景・考え方をインタビューを通して発信させていただいております。
-なるほど。インタビューや記事投稿が活動の中心である、と。
ライターさん方は障害者の方が中心なのでしょうか?
島本:スタートの頃はそうでしたね。障害を持つ方、関わる方々へインタビューする活動を始め、そこで繋がった人たちを引き込んで、「障害」というカテゴリー内で活動する発信組織になっていったのですが、次第に障害以外にも枠を広げ、今では障害に留まらず様々な分野の方にライターとして参加してもらっています。
今後はさらにいろんな立場の方と関わり、ゆくゆくは誰しもが自分の考えを自由に表現できる世の中になるよう、いろんな人の声をメディアを通じて情報発信していきたいと考えています。
-ありがとうございます。ちなみに、常駐のライターさん方は運営にも携わっていらっしゃるんでしょうか?
島本:そこが結構曖昧で、今現在メンバーたちと対話を深めているところです。
-では、会計・広報……などと部門を設けての組織化はまだ、だと。
島本:広報に関しては中心となって動いてくれているメンバーがいるんですが、会計は主に私一人で担っています。基本的に団体の中では私が担っているウエイトが大きく、意思決定においても最前線にいるので、現状メンバーとの温度差は生まれてしまっていますね。
-まさしく変革期真っ只中というわけですね。
島本:はい。その中で何か変えていかなければ、と考え取り組んだものの一つが「F,Lab」でもあります……!!
-綺麗な振り、ありがとうございます! せっかくではありますが、「F,Lab」についてはまた後ほどお伺いいたしますね(笑)。
【大切にしていること】~ラベリングって、必要?~
人見:活動する上で意識していること、大切にされていることはございますか?
島本:「障害」「健常」といった、いわゆる「ラベリング」を強調しなくていいようにしたいという思いを強く持っています。
-「ラベリングの排除」と言いますと、具体的にはどのようなことでしょう?
島本:障害があることによって生まれる生きづらさや不便さ。これらを感じている方がいるのは紛れもない事実ですし、それを解消しようと現代ではいろんな仕組み・枠組みが設けられています。それをここでは「ラベリング」と表現させていただきますが、一方で「〇〇問題」「××障害」とラベリングすることによって、かえってそこから抜け出しにくくなる、というのも事実ではないでしょうか? 人によってはラベリングにより、逆に生きづらさを感じてしまうこともあると思いますので、「あえてことさらに問題や障害を表現しなくていいのでは?」というのが僕の考えです。
「F,Lab」の相談会で荒川氏から「もっと『障害』という個性を強く発信した方が寄付も集めやすい」と助言をもらったこともあるんですが、頑なに断ってきました。健常・障害以前に、そもそも人は一人として同じ人はいないと思っていますので、表立ってラベリングを強化するような発信は避けています。
【やりがいを感じる瞬間】~非日常的な存在として~
人見:どんな時にやりがいを感じますか?
島本:私の考えや存在を通して相手の意識が変わったり、気づきを得たんだなと感じられた瞬間はとても嬉しいですね。
それこそ今日人見さんも「これまで車椅子の人と接する機会がなかった」と会う前におっしゃいましたが、常日頃あまり遭遇しない存在として私を捉え、知らなかったことを知り、少しでも意識が変わる部分があったのなら嬉しいですよ。
-そうですね。インタビューの場所決めや移動にかかるご負担など、普段あまり考えることのない部分でしたので新鮮でした。ちなみに、嬉しい瞬間というのは仕事中に限らず日々の暮らしの中でも感じることがあるんでしょうか?
島本:それはありますね。私の活動って普段の暮らしと地続きのところにありますから。
【活動成果・社会の変化】~時は経てども~
人見:これまでの活動を経て生まれた成果や、社会に残してきたものはございますか?
島本:現在「バリアフリーチャレンジ!」としてチームで活動していますが、このチームが出来上がったことがまず何よりの成果ですね。そして、我々の発信を受け取り、行動や考え方が変わったという人も周りにいるので、まだまだ狭い範囲ではありますが、変化は感じています。
社会に残せたと言えるほどの大きなものはまだなので、そこはこれからですね。
-では、島本さんの目から見て感じる、社会の変化はございますか?
島本:障害者にとって生きやすい世の中になってきたんじゃないかなと思います。例えば私より少し上の世代の話になりますが、当時者たちが自分たちの生きやすい社会を実現しようと社会に対して主張を続けたことで、「障害者差別解消法」(就労や教育の場面で障害を理由にした差別的な扱いを禁止し、過重な負担にならない範囲で「合理的配慮」の提供を義務付けた立法)という仕組みが生まれました。
こうした努力のお陰もあって、障害者を社会に引き込もうとする動きは強くなってきたと思いますし、私たちにとっても大変ありがたいことです。
しかし、いまを生きる障害者としては、与えられた権利の中だけで生きるのではなく、自分たちから社会に参画しようと努力するのは、時は経てども大切だと私は思いますね。
-与えられるだけでなく、自ら掴み取りに行く……。障害あるなし関係なく大切なことですね。
↓↓↓バリアフリーチャレンジ! さんのHPはこちらから↓↓↓
次回へ続く……