『新しいお金の在り方について語る with 株式会社eumo 代表 新井和宏さん』

NPO法人 Gift 創立5周年記念イベント

~国境なき町内会の作り方 作戦会議Vol.2~

『新しいお金の在り方について語る with 株式会社eumo 代表 新井和宏さん』

 行政や管轄といった枠組みに縛られず、地域同士がまるでご近所さんのような距離感で助け合えるフラットな社会、Giftが目指すのはそんな社会。いわば「国境なき町内会」です。

 創立5周年を記念し、今回は株式会社eumo(ユーモ)の代表 新井和宏さんとの対談が実現しました。

 資本主義社会への問いかけから始まる対談は、お金の在り方だけに留まらず、社会の作り方にまで広がっていきます。新井さんが何度も言葉にされるのは「自分で作った方が楽しくないですか?」というメッセージ。思い描く社会を作るために、一人一人に何が出来るのか?そのヒントが詰まっています!(ライター:西村 征輝

司会・進行:寺戸 慎也

パネラー:小山 真由美

新井 和宏

 

何かに従うのではなく、能動的な社会を目指して

 

寺戸最初は大きなテーマですが、資本主義社会ってこのままでいいのでしょうか?先駆的な取り組みをされている新井さんに、問いたいのですが、いかがでしょうか?

 

新井僕が見てる視点から言わせていただくと「eumo(ユーモ)」という会社では、共感が資本になる時代、「共感資本社会」の実現を掲げています。その時に共感資本”主義”社会としなかった理由は、これからは、資本主義でも社会主義でもないからです。皆さんは何かに属し、従って生きていくということを、勝手にさせられているとイメージしていますが、別に資本主義でも社会主義でもないんですよ。主義とはイデオロギーなので、対立を生むだけです。だから共感資本社会という言葉を使い、主義という言葉を全部取ったんです。

つまり、その時代を変えていく力は、何かに従う皆さんではないんですよ。皆さんが受動的に、誰かが決めた社会を生きるのではなく、皆さんが生きたい社会を皆さんが選んで、自分で生きる時代を決めることです。誰かがそういった資本主義みたいな新しいものを作ってくれるだろう、という他力ではなく、自分が社会を作ったほうが楽しいじゃないですか。

 

小山本当にその通りですね。

 

新井僕は能動的な社会というものを作りたいんですよ。日本というのは豊かなのにもかかわらず、20代30代の自殺が多く、死因の第一位です。それは夢も希望もないからですよ。夢や希望のある社会を作るなら、自分たちがその社会を定義する方が楽しいに決まってる。だったら社会を自分で作りましょうよ。資本主義は誰かが決めたわけじゃないんです。なんで昔言っていたアダム・スミスやマルクスに従わなきゃいけないんですか?って僕は思うんです。

 

寺戸たしかに。僕は今まで何気なく資本主義社会という言葉を使ってましたね。

 

新井だから結局、誰かが決めたことに従うのは楽しくないでしょう。変えられないって勝手に皆さんは思い込んでいるだけですよ。資本主義はお金に従っているんですよ。だから支配的なお金を変えた方が、社会は勝手に変わると思ったんです。お金の定義が変われば、社会は変わります。社会には従うもんだと思っている限り、社会は変わっていかないですよ。

あの、すいません、なんかものすごい重い発言をしているんですけど…

 

小山そんなことないですよ(笑)自分たちが暮らすこの社会を、自分が変えなきゃ誰が変えるんだということですよね。そういう気持ちになれない空気感や世相がありますが、それに負けてちゃダメだと思うんですよね。今日は9月1日(対談日)なんですけど、夏休みが終わり、2学期の始まる今日が、子どもの自殺が1番多い日だと言われています。子どもたちが明日生きていくことに希望が持てない社会ではなく、明日が楽しみでしょうがない社会を作っていきたいなと、私はすごく願っています。そのために、それぞれが出来ることは小さいかもしれないですけど、皆が、自分たちが変えていくと思うことが出来れば、やっぱり社会は変わっていくと思います。

 

 

社会を変えるのは一人一人の意識から

 

新井一人一人の力の大きい小さいは、自分の尺度でしかないので関係ありません。大きなお金がなければ変えられないんだというのであれば、今頃ビル・ゲイツが変えています。つまりお金だけでは社会は変えられない。社会を変えていくためには、一人一人が変わっていく必要があります。資本主義に従うのではなく、自分たちの経済を定義し、自分たちの力を信じた時に、初めて社会って変わるんですよ。ですから、僕は社会起業家に「あなたが変えるんじゃなくて、あなたはきっかけを作るだけだ」って、言ってきたんです。社会を変えるのはそれに共感をした人たちです。あなたは初めて言った人かもしれないけれども、社会を変えたのはそれにYesと言った人なんですよ。

 

小山二人目の人ってことですよね。

 

新井そう。仲間を増やすしかないし、巻き込む力を付けるしかないんですよ。だから、皆さんがこっちだと思えば、社会っていうのは勝手に変わっていくもんなんです。

そのためには、根幹であるお金が変わり、こっちのお金の方が心地いいと思えば、社会は変わると思って、僕らはやり始めたんです。でも、誰かがやり始めないと始まらないですよ。今はESGの時代とかSDGsの時代とか言われてますけど、僕が2008年に始めた時、誰1人そんなこと言ってなかった。でも時代が勝手にそういう風になっていくんです。自分が変えたんじゃない、自分が言い出しただけです。それに「そうだよね」と言った人が多かっただけです。だから言い続けること、やり続けることが大事だし、人のために生きることがすごく大事です。その大事にしたいものを表現し続けるということが生きることで、皆さんが皆さんを生きる中で、結果的に社会っていうのは変わっていくもんじゃないかなと思います。

ただ、皆さんの意識の中で、お金や経済といった社会システムは変えられないと思っているかもしれませんが、そんなことはありません、と僕らは断言しているだけなんです。お金が変えられる時代の中で、あなたはどういう経済や社会をデザインしますか?って。それをみんなと一緒に作りたいと思って、僕はeumoという会社を作ったんです。

 

小山出来るんだと信じきってやり続けるっていうことが、本当に大事なんだなと、新井さんの言葉から感じました。

 

新井そうですよ。なんだか優秀な人が今の社会を作っていると、勝手に皆さんが妄想で思っているだけです。大人は全員この社会を作っているんです。

 

小山本当にそうですよね。

 

新井子どもたちに無責任に「誰か賢い大人がこの社会を作っている」って言うんだったら、「私は大人じゃありません」と言っているのと一緒ですよ。だから少なくとも、子どもたちと向き合ったときに、僕は「ごめんなさい、今のような社会にしてしまって申し訳ない。ただし僕は絶対にあきらめない」と必ず言います。

 

小山とても大事ですね。私は去年孫が生まれたのですが、この子たちが将来、大人になったときに、恥ずかしくない自分でいたいと思っています。そのために前を向いて少しでも出来ることをやり続けていきたいなと思っているので、どんどん発言されて、活動されている新井さんと同じように、私が私の出来ることをやっていけたらいいなと思ってます。

 

新井極論すると、全ては人の愛でしかないんです。自分たちだって、へその緒で結んでもらって、要はGiftで生きてるんですよ。自分の体、自分の命、それは全てGiftなわけじゃないですか。何を驕ってるんですかっていつも思うわけですよ。自分がやったとか、自分が作ったとかじゃなくて。Giftで作られた自分で、Giftしないっておかしな話じゃないですか。だから一人一人がそれに向き合って、愛をもってどう考えるか、どう生きるかということが、社会を変える原動力なんですよ。

 

小山そうですよね。親から授かった命ですもんね。

 

新井:そうなんです。命を使うために僕らは存在していて、たまたま生かされているこの命に対してどう向き合うのか。それがまさに問われているからこそ、難しい時代だと思うんです。

一昔前は高度成長があり、その中で経済成長を競っていればいい時代でした。弱い奴は弱い奴だと言い切って、それにより経済は成長し、物質的な豊かさを得たんです。でも精神的には豊かにならなかった。極論すれば、皆さんが幸せならそれでいいんです。でも精神的に幸せじゃないのであれば、それは違うということです。

僕は、まっとうな人たちが生きにくい社会を残すんですか?と言いたい。資本主義は残念ながら行き過ぎるようにできている。お金になることだけが評価されることが間違いなのは、もう色々な事象でわかりますよね。お母さんがご飯作って家事をしてなぜ年収0円なんですか?お金で測れないことには価値がないということを資本主義ははっきりと言っているんです。

だから、仕組みを変えろってことです。じゃあどう仕組みを変えていくかということが、僕ら世代に問われてるんですよ。変えられないものに従って生きていくことって楽しいですか?やっぱりこれからの時代というのは、皆さんが主語になって作る社会を、これから生まれてくる子供たちが夢や希望にしていくんです。

 

小山:大人の疲れた背中を見せるのではなく、元気に進んでいっている希望のような背中を見せていきたいですよね。

 

新井:そうですよね。子供たちが、「お父さんお母さんずるい、早く大人になりたい」と思えるような、そんな大人たちが増えた方がよっぽど良いじゃないですか。だったら、自分たちが生きていける仕組みを、小さくてもいいから、美しいものを皆さんで作っていきましょうよ。そうすれば、全然違う社会や地域をデザイン出来るはずです。

政治家や優秀な人が作るといった他力本願的な考え方では、この社会をダメにしていく。政治を見てたらわかります。人間は環境によって変わっていくので、永田町に入ると、永田町の論理にハマるんですよ。だから政治は変わらない。政治で変える事は無理だと言っているのではなく、政治家だけに頼ることは、社会が変わらないと言っていることと同じだということです。

自分たちが小さくても、社会を変えていくと思っていなければ、社会は変わらないですよ。だから僕は、皆さんが思い描く社会をデザイン出来るようにするための、サポートツールであるお金を変えていくことによって、出来るんじゃないかと思ってやってるんですよね。

 

 

〜人を中心にお金をデザインする〜

寺戸:ここで、新井さんの事業の話を少し聞きたいなと思っています。ホームページを見させていただくと、新しい通貨であるeumoと一緒に、アカデミーというものが載っています。そこにきっと新井さんの考えている仕掛けや、社会を変えていくヒントがあるのではと思ったのですが、eumoだけではなく、アカデミーを作った背景を教えていただけますか?

 

新井:次の時代は自律分散社会になると言われていますが、これはテクノロジーで出来るものではないんですよ。ブロックチェーン、Web.3など、テクノロジーが先行している事は間違いないです。でも実際変えるのは人なんです。お金は手段で、ツールでしかない。だから、そのツールを使いこなせる人を増やすためにアカデミーをやっているんです。共感が資本になっていく社会を作っていくためには、それを実現できる人たちを作っていかないといけない。だから人づくりが中心になっています。

日本の何が世界で遅れているかと言うと、子供の頃から、お金に関する教育が何も受けられていないということです。だから親もお金のことを説明できない。「お金を大切にしなさい」と言うけれど、どうやったら大切に出来るか知らない。

お金が変わった瞬間に経済も変わるし、皆さんの価値観も変わります。仮想通貨のように、お金が変わっていく時代なんです。子どもたちが大人になる時には、お金が変わってるかもしれない。その時に、「子どもや孫たちのために、皆さんはどんなお金をデザインしますか?」って僕らは問いかけているだけなんです。

これからの時代は不確実性が高まります。不確実とは不安になるかワクワクするかのどちらかなんです。確実なものに人間はワクワクしない。自分が何歳で死ぬとわかってたらワクワクしないんです。不確実だからワクワクする。でも、今はそれを不安だと思ってしまう。将来は明るくないって思ってしまうから、自殺が増えるんですよね。

多様な価値観の中、色々な人が、どんなマイノリティだったとしても、夢や希望を持てるような社会を作るのであれば、小さな単位で、その人たちが生きることの出来る仕組みを作っていくことが大事です。だからコミュニティ通貨が大事で、コミュニティの中で何を大事にするかをお金で表現することが大事だと思って、僕らは今のeumoという仕組みを作っています。

 

小山:そうですよね。今あるものでダメだったら、自分たちで作っちゃえばいい。

 

新井:そう、作っちゃえばいいんです。僕は真面目に話してますけど、作っちゃえば変えられる、軽いもんなんですよ。そんなに重いもんじゃない。変えられないという固定概念を、教育時代から植え付けられているんですよね。お金を大事にしろと小さい頃から言われていて、その中でお金は絶対的なものであると皆さん信じてるんですよ。

でも、絶対的なものではないと、仮想通貨など、テクノロジーを使って若者がある種のメッセージを発しています。では、僕らはどんなことが出来るか?彼らが考えている思考が間違ってると、全否定するのではなくて、自分たちが自分たちなりに思い描く幸せを表現すればいいと思うんですよね。

今までは国のため、お家のため、企業のための生き方をずっとしてきたわけです。それが結局自分を守ることだったから。でもそれでは守れない時代になり、自分は自分で守りなさいと言われている。だったら、自分が生きやすい、住みやすい社会を自分の中で定義する。その中で1番根底になるお金を変えちゃいましょう。もっと素敵なお金を作ったら違う社会が作れるんじゃないですか?と僕らは問うてるんですよね。

 

 

〜格差が広がる社会の中で、私たちに出来ることとは〜

小山:新井さんの本の中では腐るお金と書かれていますが、eumoには期限がある。その発想がすごく面白いなと思っています。期限がないから、みんなため込み、循環せずに淀んでしまう。お金が腐るのであれば、すぐに使うし、ため込まない。どんどん良いところに循環して、生きの良い新鮮なお金が動いていくように感じました。今までにあまりない発想で、もっとみんなに知って欲しいと思います。

 

新井:ありがとうございます。まず1つ目に、この減価するお金というのは、100年位前からずっと言われてるんですよ。ただ、テクノロジーが変わってくるのに伴って、100年前と比べて明らかに普及しやすくなっています。ですから、時代が来たのかなとは思っています。

2つ目に、お金というのはある種、永遠の命という人間の欲望の塊なんですよ。永遠に続くものがあれば、それで財を繋ぎ、将来の人たちを困らせないで済むだろうと思っている。悪気のない、素晴らしい発想で作られているので、これを否定するものではないです。

ただ、不自然だからこそ、残念な結果が生まれる。この残念な結果の1つが格差です。永遠に続き、溜まり続けることで、格差が縮まらない現象が起きたわけです。それは夢も希望もない社会じゃないですか。要は逆転がないんです、生まれてもう勝負が決まってる。そう言われたら誰がやりますか?

だからその格差を縮めるための仕組み作りは、僕らだけじゃなくて、色々な人たちがやり続けなきゃいけない。でも、それが出来る人たちはお金を持っている人たちだから、誰もそんなの崩そうとは思わないですよ。この悪循環を断つためには、みんなで小さいけど違うものを作り続けて、むちゃくちゃ楽しい、めちゃくちゃ幸せって思える仕組みを作るしかない。それが唯一勝てる方法です。規模では勝てるわけがないんですから。

僕らは、資本主義を変えるなんておこがましい事は言ってないです。共感資本社会という社会をデザインした時に、その方が生きやすい人たちが、そこで生きられるような仕組みを作りたいだけなんですよ。マイノリティがマイノリティのまま生きられる、そんな社会をどう作っていくか。皆さんが皆さんで、自由に、自由意志で生きていける社会を、誰かが作ってくれるんじゃなくて、自分で作りましょうよ。それがテクノロジーで出来る時代なんだからって言い続けたいですね。

 

 

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