皆さん、こんにちは。認定NPO法人Giftです。
私たちGiftはNPOを対象に、寄付を取り入れ、安定した経営と組織体制を目指す「F,Lab」というプログラムを実施しています。第4期目となる今回、アカラクリエイト代表の井上健一郎先生をお招きし、チームビルディング(組織運営)に関する講座を実施しました。講座自体はF,Lab受講生が対象ですが、内容について一部記事として公開させていただきます。
NPOはもちろんのこと、「組織」に関わる皆さんにとって有益な情報が詰まっていますので、ぜひ皆さんの活動にお役立ていただけたらと思います。
本記事は、連載形式でお届けします。
①場について(前半)〜組織の目的と、場の重要性〜
②場について(後半)〜具体的な場の作り方〜
③組織文化の作り方(前半)〜リーダーとしてのあり方と組織の習慣〜 ※今回の記事
④組織文化の作り方(後半)〜ビジョンを作り、組織内で広める〜
初回の組織の目的と場の重要性に続いて、前回(記事はこちら)は、具体的な場の作り方について確認しました。
今回はさらに話を進めて、「組織文化の作り方」について学んでいきます。
NPO組織運営の特徴〜個人の想いが強いため、方向付けが難しい〜
NPOは存在自体がテーマを持っていますので、案外組織の目的については共有しやすいんだろうと思います。
ただ、逆にいうとNPOは金銭的な報酬での繋がりが強いわけではなく「そういうテーマでやってるんなら私も参加しようかな」と個人の思いが強く、「自分の思いの実現」を無意識のうちに優先されていることもあるんじゃないかなと思っています。
「共通の目的を持ちましょう」という一般的な組織論の中でも、共通したテーマは持ちやすいですが、それぞれの人の思いも強いので、組織対個人というパワーバランスでは、個人の方に傾きやすいのではないかなと思います。
個々人が違う方向を向いてしまうと組織の方向性は定まらないので、個々人の方向性や想いももちろん大事ですが、それらをいい方向に持っていく、方向づけする方法については後半で皆さんと一緒に考えたいテーマです。
まず「組織文化」について、先に考えたいと思います。
組織を構成する4領域
インテグラル理論の中の「4象限」をご紹介します。世の中のことは「個と集団」と「内面と外面」の二軸で説明できますよと言っています。
「個の内面」「個の外面」「組織の内面」「組織の外面」と分けて考えることができます。
例えば個人で言うと自己啓発は「個の内面」のこと、スキルアップは「個の外面」となります。この図のように「能力」と書き切ってしまうと、注意しないといけないのですが、能力には「技能」のような外側の能力がありますが、ここで書いている「能力」は意識も含めた内面のパワーのことと思ってもらえたらいいと思います。個の外面としては具体的な行動や技能のようなものが入ってくると理解してください。
集団としての内面についてが、これから話したい文化や風土になります。外面はシステム、これは情報システムもそうですが、「ルール」といったものも含みます。
組織の内面(文化・風土)が非常に大事ですが、文化と風土は似ているようでちょっと違います。文化は考え方、風土というと雰囲気や環境であったりします。組織を運営する中で、どんな雰囲気であって欲しいかを意識することはあると思います。例えば、新しい人が入ったことで雰囲気が変わったなと感じることがあると思います。そのように、風土が文化に影響することもあります。
組織文化の作り方「厳しさ」と「やさしさ」のバランス
組織文化を構成する上での相反する要素についてです。厳しさとやさしさと言う「テーマ」について皆さんわかっているとは思うのですが、ある種善意で集まってくれているNPOの組織で言うと善意に対する感謝もあるために「やさしさ」によってしまうことが多いのではないでしょうか。
左側が強いと、ある意味では思考停止になる、右側が強いと、「ゆるさ」につながる可能性があります。この辺りが要注意です。では、どうしていくかを話していきます。
組織文化はなぜ大事かというと、一人一人が物事を判断するためのフレームになっているからです。違う言い方をすれば、組織文化とは、その組織の「当たり前」となっていることです。
先程の「厳しさ」「やさしさ」の例で言うと鉄道業界の指差し確認をしますよね。動きまで含めてルールをしっかり定着していれば、普段の行動も規律正しくなりますし、何かを決める時も「安全性」を重視して決めるということになっています。
その組織の「常識」を作っていくことが、組織文化つくりになります。
ただ組織文化は自然発生的にもできてしまうものです。もし今組織の雰囲気が悪いと思うのであれば、今ある組織文化を疑った方がいいかもしれません。
意識決定と行動に文化が影響するということは、逆に言うと「意思決定」と「行動」から組織文化が作られるということも言えます。さっき言ったように「この組織は安全性を重視するよね」とか「冒険を重んじるよね」と、日々の意識決定が文化を決めていきます。
なので、あるときは安全重視、ある時は冒険いう風にしてしまうと、組織文化がよくわからないということになってしまいます。
組織文化への影響力「リーダーのあり方」
組織文化に大きな影響力を与えるのは「リーダーのあり方」と「習慣化されている行動」になります。リーダーのあり方については先ほど話した通りに「厳しさ」と「やさしさ」のバランスが重要になってくると思います。どの部分を厳しく、一方でどういう部分はやさしくあればいいのか、ぜひ考えてみてください。
例として、「人間力」と言うものを挙げてみました。自分たちの組織をどうしていきたいか、そのために自分はどういう佇まいでいたらいいんだろうか。当てはまるものに丸をして見てください。当てはまらないものがあれば言葉を書き足してもいいと思います。ぜひ時間をとって、ご自身のことを振り返ってみていただけたらと思います。
リーダーが影響力を与えると話すと、「背中を見せるんですね?」と聞かれることがあるのですが、それはちょっと違います。
無言で姿を見せるのではなく、組織文化をつくるためにはぜひ「言葉」にして伝えてほしいと思います。「なぜならば」と、組織の価値観に根差した言葉を発することが、文化を作っていきます。
高めたい人間力が決まったら、ぜひ行動指針を考えてください。抽象度は高くても低くても構いませんが、ぜひ一度考えて言葉にしてみてください。ちなみに私の場合は「先を見る」と言うことが行動指針になっています。
組織文化への影響力「習慣化された行動」
続いて習慣化された行動についての例をあげてみます。
価値観をベースにした意思決定については先ほども触れましたが、何かを決めるときには必ず言葉にするようにしてください。「なぜならば」と組織の価値観に根付く形で言葉にしていくことが文化を作っていく際には重要になります。
また、「組織を変えていく」という癖をつけておく意味で「変化をつける」ことを習慣にすることもあると思います。変化の大きい時代なので変わることに慣れておくことは重要です。
「学校の席替え」と似ていますが、定期的に何かを変えていく。例えば名刺のデザイン、レイアウトを変えるでもいいですが、何か変化をつけることを習慣化しておくことで、変わっていくことに対する抵抗感を自然と薄めていく効果があると思います。
組織文化を築く「経営理念」はリーダーが襟を正すためにある
後半に向けて、経営理念についての話をしていきたいと思います。よく色々な団体で「御社に経営理念はありますか?それに沿って社員は行動されていますか?」と聞くと『経営理念はあるけど、浸透していないんだよね』と聞くことがあります。
私は違和感を覚えます。
というのは「経営理念は社員に求めるものではなく、経営者やリーダーが判断を誤らないために持っていて欲しいツール」だと、思っているからです。
社員やメンバーに向けて「この理念で動きなさいよ」と言う前に、「私はこの理念で動いていますよ」と行動することと、繰り返しになりますが、行動と合わせて「この考えに基づくと、この結論に達した」ということを言葉にしていっていただきたいと思います。
少し観点はかわりますが、人が成果に向かって行動するのは「結果が見えること、得られた結果に意味や価値を感じる時」ということ、もう1つはその「行動すること自体が自分はこういう人間なんだってことを証明したい」という欲求もあり、この2つの側面がすごく大事になります。
NPOに参加されている方達は、ご自身がこうありたいという意識を持って参加する方が非常に多いと思いますので、個々人のビジョンやミッションについてもぜひ形にしてあげてほしいなと思います。
まとめ
NPOは存在自体がテーマを持っているために組織の目的については共有しやすい側面はありますが、参加する方は「自分はこうありたい」という想いの強い方が多いため、方向性を束ねていくことが重要になります。
方向性を束ねるときに組織の外面的なルールの前に、内面にあたる「組織文化」が重要になります。組織文化は簡単に言うと「組織の当たり前」のこと。その「当たり前」が組織や個人が判断したり行動をするときに影響を与えるために、成果が出ない、雰囲気に違和感がある場合にはこの組織文化に目を向けることが重要です。
今回はその組織文化に大きな影響を与える「リーダーのあり方」「習慣化された行動」についてお伝えしました。リーダーが目指したい組織文化に基づいて意思決定をすること、さらにその意識決定の過程を言語化することで組織文化は浸透していきます。
次回はいよいよ最終回ですが、「ビジョンを作り、組織内で広める」方法についてお伝えしていきます。