インタビュアー:人見 尚汰
インタビュイー:志水 久容さん(理事長)・高木 恵美さん(副理事)
◇「男女」ではなく、「個人」を見られたら◇
人見:最近、ある著名人が女性を蔑視する発言をし、それに対して多くの人が異を唱え、声を上げるといったことが起きましたね。そのようなニュースを見ていると、差別是正や男女平等に対する認識が近年高まりつつあるのかなと感じるのですが、実際女性を取り巻く現場で活動されている『ゆるん』の肌感としては、現状をどう感じていますか?
高木:私のごく身近な環境では差別を感じるようなことはないのですが、上司からパワハラを受けているという相談を受けたことはありますし、社会全体で見たらまだまだあるのかなと思っています。
ただ、フラットな人も増えている印象もあります。
例えば20年前。その当時の女性は旦那さんの許可が降りないと働きに出られないような時代だったんですよ。その許可も、「家のことがちゃんとこなせるなら」という条件付きで。つまり「働きに出ても、家のことはちゃんとやれよ?」というのが当たり前だったわけです。
でも、現代は女性も働くのが普通になりました。だからこそその分、性差がクローズアップされやすい世の中になってきているように思いますね。その著名人の発言も、そういった背景があって大きなニュースになったんじゃないでしょうか。
――認識の高まりとともに、世の中が過敏になっていますよね。
高木:なってますね。性別が原因で出世出来なかったり、パワハラ・セクハラが横行するのはもちろんダメだと思うんですが、「こういうこと言う奴はダメだー!」とみんなでとっちめるほど過敏すぎるのも、なんだかなーと思ったり。
志水:例えば「女は話す時、主語がない!」って言う人いらっしゃいますけど、男性にだってそういう方いらっしゃると思うんですよ。逆に女性より料理が得意な男性だっていらっしゃいますよね。それと同じで、「男性」「女性」関係なく、その人個人のすごいなと思うところに注目できるようになるといいですよね。
◇お互いのことをもっとよく知ろう◇
人見:世の男性に求めることや、男性にはこうあって欲しい!と思うことはありますか?
高木:女性の体のことをちゃんと知ってほしいですね。
生理とか妊娠とか、男性にはない体の変化が女性にはあります。仕事中に生理痛がしんどくなってもそれを直接「生理痛で……」と伝えるのは今のところなかなか難しいですが、男性の理解が進むと女性も気軽に相談しやすくなると思います。もっと言えばお互いの思考の違いにも気付けると思いますから、仕事においても、パートナー間においても、コミュニケーションの面でスムーズになるんじゃないでしょうかね。もちろん、女性も男性の体のことをちゃんと理解して。
志水:「女性ってこういう時大変なんだよ!」「こういうことがあるんだよ!」というのは男性に、ではなく、世の中の一人でも多くの人に知ってもらいたいですね。
――「男性に求める」ではなく、「社会に求める」ということでしょうか。
志水:そうですね。でも最近は一緒に子育てする男性の方や家事を積極的にする方も増えましたし、女性に対して理解のあるやさしい男性が増えていると思いますよ。
――最近読んだ、結婚しても「イクメン」や「カジメン」になってはいけない、という趣旨の記事にとても感心したんですが、その記事では、「育児や家事は女性がするもの」「男はしなくていい」という前提があるから「家事を手伝ってみて」とか「育児に参加してみて」と語る男性がいるんだ、という事が語られていました。
高木:「手伝う」という言葉がない社会ができたらいいですよね。
子供の頃、よく「お手伝い」って言葉が出てきたじゃないですか。あれも「する」でいいと思うんです。自分の茶碗は自分で洗う、我が家のルールはこれ! みたいな。
それは夫婦に置き換えても同じで、家事も育児も「する」でいいと思います。
ただ、子育てが苦手なお父さんもいらっしゃると思うんですよ。接するのが苦手、とか。それでも家庭が円満ならいいと思いますし、絶対子育てを夫婦でやらなきゃいけないというのも間違っていると思います。それぞれの家族に、それぞれの形があっていいんじゃないでしょうか。
志水:まぁでも一番男性に求めるのは、機嫌よく過ごさせてってことじゃないですかね? ニコニコしていられることが幸せだし、そうやって気持ちにゆとりが出来れば、やさしくもなれますから。
◇みんなもうすでに活躍しているんです◇
人見:今後女性がもっと活躍していくためには、どんなことが必要だと思いますか?
高木:活躍しなくていいんですよ!
今の日本って「〇〇活躍社会」みたいな張り出し方をしていますけど、働くことによって女性が活躍するみたいなニュアンスがそもそも間違っていると思うんですよ。専業主婦だって活躍しているし、パートの人だって活躍しているし、結婚してない人も活躍している。みんなもうすでに活躍してるんですよ。だから、仕事で活躍しなくちゃいけないよね、っていうよりもっとフラットに居られる社会、言ってしまえば「やりたい事ができる社会」がいいと思いますね。
――確かに、「活躍社会」という言葉の裏には「今活躍してないよね」とか「女性って立場悪いよね」といったマイナスなニュアンスも感じられますし、お話を聞いていてすごく本質的だなと感じました。
高木:育児に積極的な男性を「イクメン」としてわざわざ取り上げなくてもいいのと同じように、「女性の活躍を!」と取り上げる必要のない社会になっていくといいですよね。