皆さん、こんにちは。認定NPO法人Giftです。
私たちGiftはNPOを対象に、寄付を取り入れ、安定した経営と組織体制を目指す「F,Lab」というプログラムを実施しています。第4期目となる今回、アカラクリエイト代表の井上健一郎先生をお招きし、チームビルディング(組織運営)に関する講座を実施しました。講座自体はF,Lab受講生が対象ですが、内容について一部記事として公開させていただきます。
※井上先生との対談記事はこちら
NPOはもちろんのこと、「組織」に関わる皆さんにとって有益な情報が詰まっていますので、ぜひ皆さんの活動にお役立ていただけたらと思います。
本記事は、連載形式でお届けします。
①場について(前半)〜組織の目的と、場の重要性〜 ※今回の記事
②場について(後半)〜具体的な場の作り方〜
③組織文化の作り方(前半)〜リーダーとしてのあり方と組織の習慣〜
④組織文化の作り方(後半)〜ビジョンを作り、組織内で広める〜
第1回目の今回は、基礎的な知識として組織の目的と、その組織を形作るための「場」の重要性についてをお届けいたします。
それでは、いってみましょう!
これからの組織は「貢献」が求められる
井上先生:まず、新入社員の意識調査から確認していきます。世の中の流れがどこに向かって行くのかを知るのに意外と役に立つので、私はよくこの意識調査を見ています。(https://www.recruit-ms.co.jp/press/pressrelease/detail/0000000377/)
面白かったのが 「仕事をする上で重視すること」について「貢献」が1位になりました。これは、今までになかった傾向です。皆さんの団体(NPO)の価値が高まっていくんだなぁと、再認識したところです。
リクルート新入社員意識調査2022より
井上先生:また、別の調査(日本能率協会の2022年度新入社員意識調査)では、仕事の不安について人間関係について、「上司・同僚などの職場の人とうまくやっていけるか(64.6%)」が1位となっています。組織内での関係性みたいなものが、意識されているということを前段としてお話ししておこうと思います。
また内閣府の調査ですけども、どういう団体に寄付をするかを確認したところ「組織としてしっかり仕事ができていること」だったり、「経営がしっかりできている組織」だったら寄付しようと考える傾向が見えますね。
これからの組織について、組織を構成する人それぞれが自律的で合ったほうが、生産性や価値向上ができるのではないかと思っています。まず、組織運営上で基本原則となることって何かな?ということをお話ししてみます。
より高い価値を提供するため、自律的な組織を目指す
井上先生:組織の最大の特徴は「それぞれ特性・個性の異なる人々で構成されている」ことと言えます。私は社会に出てから27年間、音楽関連会社にいましたが、そこでは商品のスペックを開発して売って行くというよりは、音楽というものを世の中に広めるということを目的としていました。
その組織で重要だったことは、「従業員それぞれの個性」だったんですね。ヒット作品を産むということが全員共通のテーマになるのですが、ただそのテーマに向かって何をするか、それぞれの考え方の違いがあると思います。
組織が機能するには、3つの要素が重要とされています。
井上先生のスライドより
井上先生:まずは組織の目的です。目的がなければ「単なる集団」になってしまいます。目的については、NPO法人の方の場合は、よりはっきりしている組織が多いのではないかと思っています。案外、中小企業などは逆にこの目的が弱い企業が多いので、先にこの組織目的着手しないといけない場合が多いです。ただ、NPOの場合は目的をしっかり持っている組織が多いと思うので、皆さんその点は自信を持っているのではと思っています。
その目的のために、それぞれが貢献する意識を持っていないといけない、それにはお互い協力するという姿勢も大事になると思います。
あとは円滑なコミュニケーションが取れること。メンバーの一人が知らない間に違う行動をしてしまったということがないように、情報の共有やコミュニケーションというベース部分が課題になってくるのかなぁと思います。
この辺りが組織づくりにおいて基盤として取り扱わないといけない重要な部分となっています。
組織には特性や個性が違う人が集まっているとお話ししましたが、全く考え方が違う二人がいるとしたら組織としてなかなか機能しないだろうと思います。組織に参加している人々の、共通する部分を作って行くことが大事です。
では全員が100%同じ意見を目指すのが良いのか、というとそれもまた違っていて、それぞれが違う意見というのをお互いぶつけながら、また違う新しい考え方を生み出すことが大事になってくると思います。
リーダーシップ=旗を立て、巻き込む、場を作る
井上先生:組織においてはリーダーシップについて大事だと、必ず語られます。
私なりにリーダーシップを分解すると、「旗を立てる」「巻き込む」「場を作る」の3点に分解できると考えています。
井上先生のスライドより
「旗を立てる」というのは組織がどこへ向かうのか、どのように向かうのかという方針を立てることで、そこから人々を巻き込んでいくのですが、その上で私がずっと大事にしてきたのは「場を作る」ということです。場というものを通じて、巻き込んだり、旗への理解を示してもらうということが大事かと思います。
場の運用上大事なものは「共通認識」と「相互作用」が2大テーマとなります。「こういう場合は、こう考えるよね?」という共通認識を持っていること、またお互いが考えていることにより、共に何か新しいものを作っていく感覚=相互作用が組織運営の上では重要です。
ただ経営の上で一番重要なのは「決める」ということです。危ないのは合議制、みんなで決めることを重要視するあまりに「実は何も決まってない」ということがあるので、そこは注意してください。必要なのは「判断基準」という共通認識があることで、放っておいても間違った行動をしないということになります。
また「相互作用」について重要になってくるのは「情報」です。情報といっても「こういうことが在る」というだけではなく「こう考えますよ」というのも情報の一つとなってきます。
事実としての情報と、それに対してどう感じるかという感情的な情報も大事な情報になります。
何かを「決める」という大事な話をする時に、「おそらく、この人はこういうことを考えるんだろうな」という風に感じやすいということもあるので、感情的な情報があると、対話が進みやすいです。
改めて、そのための場づくりが大事と思います。次は改めて「場」について整理していきます。
場とは、情報的・心理的相互作用の容れ物
井上先生:今日は伊丹敬之さんの「場の論理とマネジメント」という書籍から場についての定義をご紹介しようと思います。
「場とは、人々がそこに参加し、意識無意識のうちに相互に観察し、コミュニケーションを行い、相互に理解し、相互に働きかけ合い、相互に心理的刺激をする、その状況の枠組みのこと」と言われています。
別の言い方としては「人々の間の情報的相互作用と心理的相互作用のための容れ物」ということができます。
井上先生のスライドより
いろんな価値観も含めて混ざっていく、そして統合されていく、その過程が大事だと思います。
情報的相互作用というのは、共通理解を得るために必要です。一方で、心理的相互作用によって共振・共感と言いますが、同じようなイメージを持つとか賛同する、仲間意識を持つ。こうしたものを積み重ねることによって、協働的な組織行動ができるようになる、ということだと思います。
もう1つの効果があって、こういう場作りをしていると情報蓄積されていきますので、組織としての気づきや学びが生まれてきます。
組織としては「決めていかなければならない」というのと、異なる考えを相互に混ぜていく、その両方が必要だと思いますが、決めていくという場合については、「会議」のようなものを想定していただくと良いかと思います。もう1つはあえて「人々が触れ合う場」を設計していくといいと思います。サロンのように自然発生的に交流が生まれるような場をあえて作っていく。
例えば、講演の中で、成功する組織に共通のものは「コーヒーポッド」ですと言った方がいました。またフリーアドレスを採用している組織もあります。自分たちの持ち物をそれぞれの引き出しにおいておくのではなく、共通のロッカーを作った。そうすると朝、自然発生的に会話が起こる、あえてそういうことを設計するような会社も多くなっています。
このように空間的な工夫ももちろんありますし、ここからお話しする「会議の設定の仕方」というのも場の設計の一つになると思っています。
まとめ
最近では、NPO法人に限らず社会に貢献することが求められており、目的がはっきりしているNPOにとって良い流れができていますが、寄付をしたいと思ってもらうには組織だって経営をしっかりしている団体で在ることが重要になってきています。
組織の特徴は「それぞれ特性・個性の異なる人々で構成されている」ことです。そうした組織を運営して行く上でリーダーシップが重要で、井上先生は中でも「場を作る」ことを重視されてきました。
場とは「人々の間の情報的相互作用と心理的相互作用のための容れ物」であり、場を通じて共通理解を作ったり、対話が進めやすくなる交流を作って行くことが組織運営をする上で重要です。
次回は具体的な会議の設定方法などについてお伝えしていきたいと思います。
(第二回の記事はこちら)