『目指すのは保護ネコが居なくなる世界 with NPO法人CAIT SITH代表 服部由佳さん』
~Dialogue on IssueVol.08~
Dialogue on Issueは「これまであまり注目されてこなかった社会の問題」や「問題としては知られているものの、まだあまり話されていないこと」を話し合い、より良い社会の可能性を探求する場です。
今回は、猫の殺処分ゼロ、そしてその先にある「⼈と猫の共存する⽂化」を目指しているNPO法人CAIT SITH(ケットシー)代表の服部由佳さん、一部理事の墨田さんにもお話をお伺いし、その後対話を行うオンラインイベントを開催しました。
司会・進行:遠藤龍、一木逸人
ゲスト:服部由佳さん、墨田さん
Dialogue on Issueについて
「社会には話し合われてすらいない課題がある。」
これは私たちNPO法人Giftが様々なNPO団体さんと関わる中で抱いている実感です。
私たちは様々な団体さんと関わり、「初めて聞く課題のこと」や「聞いたことはあるけれど、まだあまり話されていないこと」などを何度も教えていただきました。
社会を少しでもより良いものにしたいとGiftに関わってくださるみなさんと話し合うことで、より良い未来に向けて、新しい社会の仕組みを考えていきたいと思います。話し合いだけで課題が解決することはないかもしれませんが、問題意識をすり合わせていく対話を経て、人と人がつながる力は、社会を変えうるものだと私たちは感じています。
「より良い未来を考えていく関係づくり」を皆さんと行えたら嬉しいです。
CAIT SITHの活動について
遠藤:まず、活動内容の紹介をお願いします。
服部:NPO法人CAIT SITH(ケットシー、以下CAIT SITH)は、奄美大島の「ノネコ管理計画」により捕獲された猫ちゃんを殺処分から救うため、「殺処分ゼロ」を目指しています。クラウドファンディングを実施して、2020年4月5日、神奈川県横浜市に猫カフェをオープンしました。
奄美⼤島のノネコは譲渡認定⼈になる事で引き取ることができます。しかし譲渡認定⼈の数が⾮常に少なく⽇本でも現在 15 ⼈程しかいません。引き取りする人数がすごく少ないのですが、CAIT SITHの「預かりボランティア」さんが今10名程いて、そういう方たちにも猫を預かってもらうことができています 。
個人の活動家さんは、譲渡会やSNS 里親サイトなどを使って里親募集するのが一般的になっていますが、CAIT SITHは猫カフェをやっていますので、そちらで家族として迎えたい人が気軽に立ち寄ったりとか、譲渡を考えていない人でも保護猫と触れ合いながら「適性飼育」など啓蒙活動をする場としても成り立っています。
奄美大島の「ノネコ管理計画」について
服部:2022年に世界遺産登録となった奄美⼤島には、多くの固有種や絶滅危惧種を含む貴重な在来⽣物が⽣息・⽣育しています。環境省らは、⼭に住むそれらアマミノクロウサギやアマミヤマギシらを、ノネコ(ネコ)が捕殺したとし、そのノネコを駆除する事を⽬的に 2018 年7⽉より10年間の「ノネコ管理計画」を開始し、今5年目になります。
ノネコが罠にかかり収用されると「譲渡認定人」にメール来ます。そのメールを見て1週間以内に手をあげないと、殺処分になります。
そもそも「ノネコ」とは何なんだろう、という話なんですが、「侵略的外来種」として分類されています。人から餌を与えられることなく自力で狩りをして生活している猫をノネコと呼ぶということです。
野良猫や飼い猫は動物愛護法に守られていますが、ノネコと呼ばれることでその猫は「有害鳥獣駆除」ということで自治体が捕獲することが可能になっていて、野良猫を殺処分すれば殺処分数としてカウントされるますが、ノネコとして捕獲された場合は殺処分数にカウントされません。
クロウサギは実際に増えているのに、ノネコ管理計画が始まり駆除することに私は疑問を感じていました 。
活動に誘ってくださった「NPO法⼈ゴールゼロ」の斎藤朋⼦獣医師が、これら保護活動の団⻑となって「あまみのねこひっこし応援団!」と名付け、⼀⼈ではなく皆で助けあって⼀緒に奄美のノネコ(ネコ)を救おうと呼びかけています。
最初の時は 管理計画自体を止めることを考えて国会議事堂に行って国会議員の先生とお話ししたり、奄美大島に直接行って意見書を提出したりいろいろしたんですが、実際に行政を動かすのは難しさを感じています。
現在はみんなで頑張って、里親に引き渡すことを継続しています。
責任ある預かり手を探すための「猫カフェ」
遠藤:これまで何匹ぐらいの猫を引き取って来られたんですか?
服部:全体で捕獲されたのは400匹近くで、そのうち300くらい「あまみのねこひっこし応援団」で引き取っています。CATE SITHでは130匹程を引き取っています。
遠藤:引き取り手を見つけるのは大変ではないかと想像しますが、どうやって見つけているんでしょうか。
服部:CAIT SITHでは「猫カフェ」を利用してもらって、家族全員でその猫に会っていただきます。お申込書を書いてもらうんですがそれがアンケートっぽくなっているんで、お留守番 時間やお仕事時間のこと、これまで猫を飼ったことがあるかとかを確認します。さらに実際に質問を重ね、譲渡に向いているかを判断させてもらうのがCAIT SITHになります。
遠藤:猫カフェに来てもらった方と、しっかり話をしていくわけですね。
服部:猫カフェだから何回も会うことができるんですけど、一般に行われている譲渡会の場合は一回で決めなきゃいけないので、私はちょっとその方が難しいなって思ってます。
遠藤:何回か来ていただいて、信頼関係ができた上で譲るようにしたいということなんですね。一方で服部さんがそこまで考えられて、行動されているのって何でなんだろうなというかなんかそこはちょっと気になります。
服部:個人でやってた時に比べると、いっぱい数を出すっていう責任感がすごいかかってきて いっぱい出せば、いっぱい 戻ってくるかもしれないっていう恐怖もあるので そこを戻ってこないようにするにはどうしたらいいかっていうと、少し厳しくしたいなっていうのはありますね。
「病気への理解不足」と「人馴れまでの過程」が預かりを阻む要因
遠藤:猫ちゃんたちの引き取り手を増やすのが、難しい理由はありますか。ここでチャットでメッセージが来ていますね。
※チャットにて獣医さんからのメッセージ
『野良猫ちゃんに多い猫エイズウィルスを持っている子も多く、譲渡を阻みます。エイズは一生抱える病気で理解が必要な病気です。成猫ちゃんで病気もち、ノネコでなくてももらわれにくいのが現状です。』
遠藤:これまで見てきた中では、そういった病気をもった猫ちゃんも多かったんですか。
服部:猫カフェではエイズ陰性の子を引き取ってはいるんですが、エイズや白血病だった子もいます。
猫カフェに入る前に必ず2ヶ月間預かりボランティアさんの家で隔離して、「猫エイズウィルス」と「白血病」の検査をし、陰性だった子だけカフェに出しています。エイズだった子は個別に譲渡会やSNSでの発信を行います。
※同獣医師さんより発言:猫エイズウイルスは人には感染しないのですが、体の細胞に入り込んじゃうので陽性の子はそのウィルスを体の中にを持つことになってしまうんですね。病気が発症するわけではないんですけども、やっぱり将来的に免疫が落ちてしまって症状が出てくるので、やっぱりご理解が必要になってくるところになります。
ノネコでなくたって、子猫の方が貰われやすい、成猫ちゃんはもらわれにくいということもあります。ほとんどは成猫として捕まってるので、さらにそこに病気を持っている子と比べると、それは持っていないこの方が貰われやすいので、預かりボランティアの中でも、次の里親さんのところに行かなくて、ネックになっているかなと思います。
一木:他にも譲渡を妨げたり、難しくさせてしまう原因あれば、知りたいなと思うんですが、何かありますか。
墨田:その他には「人馴れしていない猫」がハードルが高くなります。触れないというか、そもそも猫は抱っこすることはあまりしませんが、ご飯をあげようと手を差し出すと、手をひっかかれたり噛まれたりとかすると、もらえわれにくいです。
ただ、徐々に人馴れトレーニングはできるので、時間はかかっても、 例えば1年ぐらいかかっても人馴れは必ずすると私は思います。人馴れしない猫はいないと信じています。
人と猫が共存し、殺処分がなくなる社会へ
遠藤:この活動の中で「ゴール」があるとしたら、どういったものになるでしょうか。
服部:奄美大島のことだけで行くと、あと残り5年の管理計画の中で「殺処分 ゼロ」を目指してるので、そこはそのまま続けていきたいと思っていますが、管理計画が終わってもこの流れは続くと思っています。
沖縄も同様に計画が終わっても続いているので、奄美も同じなのかなと思ってるとこがあります。
奄美大島に限っては、猫と上手く共存していき、排除されないようになればいいなって思います。島の人たちがもう少し意識を高めて、飼い猫は家に入れるとかちゃんと買い猫ってわかるように捕まっても、捕まっても探しに行くぐらいになってくれたらいいなって。
それがゴールですね。なかなか先の見えないゴールではありますが…奄美大島に関しては、そう思っています。
服部さんとの対談の後、以下の4つのブレイクアウトルームに分かれて、40分間の対話を行いました。
①保護ネコを迎えに⾏きたくなる⼈を増やすには?
②どういう人に猫は預かられたいのだろう?
③自分が関心のある社会課題や身近な問題って?
④雑談部屋(休憩部屋)
「Dialogue on Issue」では、社会であまり知られていない課題に取り組むNPO等を招きお話を聞いた後に、参加者の皆さんと対話の場を開いています。
今後も継続して開催予定ですので、ぜひご参加ください。