「ありがとうをはこぶお金、やさしさがめぐる社会」新井和宏さん(非営利株式会社eumo)

 

皆さん、こんにちは。認定NPO法人Giftです。

Circular Design College(サーキュラー・デザイン・カレッジ)は、想いやお金が循環する社会づくりを探求する場です。これまでの価値観を抜け出して、一歩先の取り組みを行うゲストからビジネスや日常の中で新しい選択肢を得るための視点や着眼点を学びます。

第一回目のゲストは新井和宏さん(非営利株式会社eumo)、タイトルは「ありがとうをはこぶお金、やさしさがめぐる社会」

新井さんからは関係性や想いの循環が起こるようなお金のあり方、使い方、お金以外の資本の使い方についてお話を伺いました。

 

「ソーシャル」な事業に関わる人が、「楽しむ」ことが大事!

 

新井和宏と申します。今日は人数が少ないので気楽に気軽にご参加いただけたらと思います。

背景に白樺の木を使っています。北海道のニセコ町というところにおりまして今もニセコにおります。羊蹄山が見えるところに住んでいます。

個人的にスキーのインストラクターをやっておりまして、メインでやっているわけではないのですが(笑)、知り合いがニセコにくるときに、お子さんにお伝えするということです。その時に何が必要かというと、本人の「やりたい」という想いが大事じゃないですか。もっと上手くなりたいという思いでも、負けたくないという思いでもいいですが、その気持ちが大事で、そこに寄り添うことが大事です。

「知りたい!」と言った時に、僕が知っていることを伝えるというだけです。

ただ、スキーの講習などにいくと「お前は下手くそだ」と言われてしまうんです。みんながみんな、教育者になるわけではないですよね。みんな違う目的を持ってきているのすが、「上手くなることが全てだ」「みんな上手くなりたいので、ちゃんと教えることが大事だ」という風に思っているのではないでしょうか。

みんなどんどんやる気がなくなって、どんどんスキー業界はシュリンクしていっている。そうした状況なのに、いまだにそういうことをしているのは「なんだかなぁ」と思います。

自分自身の幸せが大事なことで、ソーシャルなことをやる人が犠牲を払って、身を削って頑張ってます、という状況は魅力的に映らないんだろうなぁと思います。ソーシャル側にいる立場からいうと、我々が楽しんでいる、輝いているということ、「なんでこんな素敵なんだろう」と思った時に、お金が社会の役に立っているもんと言える、楽しみが「ダダ漏れ」の状態を作ることが大事かなと思います。

 

 

「お金」を優先させることで抜け落ちてしまったものを見つける

 

さて、私がなぜニセコにいるかという話なんですけど、ニセコが我々(eumo)の提唱している「共感資本社会」という新しい社会像を目指すという理念を共有していただいた町の第一号で、一緒にまちづくりを目指しています。

その中で大きなドライバー、ツールになるのが「お金」です。

「お金になる」ことを積極的に選ぶということではないのですが、お金のためにやってないのでとボランティアをする人って「受取拒否」をするわけですが、それをするのはちょっと違うかなぁと思っています。もらったお金を、他のことに使うだけの話、だと思います。

「ありがとう」を拒絶するのではなく、その「ありがとう」をなるべく早く届けると言う感覚になってほしい、お金の流れを滞らせるプロになってしまうといけないなと思います。精神論っぽくなるのですが、実際経済ってそうなんですよね。

例えば、今参加者が10名いますが、小さな経済というのは「ありがとう」を断ると、どういうことが起こるということを知ってもらえたらと思います。労働や社会参画を通じた対価というのは、お金以外の様々な形で存在しています。

ただ、これまで「戦士」のように戦うことが前提で、参加しているのは「まるっと自分」ではないんですよね。ただ、多様性の時代と言われる状況で、鎧兜を脱いで、まるっと社員を受け入れる時代になってきた、お金だけが対価じゃなく、ソーシャルリターンややりがいなどが価値になってきています

お金で評価できているもの、お金では評価できてないものが存在するということは認識できていると思います。

「家事」をしてくれている人にお金は払っちゃいけないのか、最低でも年収500万円くらいではないかと例として出させてもらっているのですが、じゃあそれがお金になったほうがいいのか、ならないほうがいいのかということを含めて、考える必要があると思います

お金を重要視することで、抜け落ちてしまってしまうものがたくさんあるわけですよね。

会社でいうと、売上げに繋がらないことをやってどうするの?とか、会社のなかの潤滑的な人材がいなくなってしまうと、遊びがないと余裕がなくなってギクシャクして、人と人との関係が悪くなってしまう、ということが起こってしまうわけですよね。みんなが幸せになったのか、会社が儲かっただけで、社員はギスギスする、それって幸せなのか。

お金を優先することで、抜け落ちしてしまうものをもう一度見つめ直さないといけないと思います。

 

お金の流れを滞らせずに、循環させる

 

「抜け落ちてしまったもの」が、お金なしで持続可能なのかと言うことを考えないといけないと思います。

お金は循環していれば、続きます。ただ、お金が戻ってこなければ続かない。止めない、滞らせない、活動を続けてもらう状況を作ることが、大事なテーマじゃないかなでもと思っています。

ニセコ町では、これからのまちづくりについて審議をさせていただいています。ニセコ町をどういう街にしていくかと言うところで、環境、経済、子育て、共助をどうするのか、医療の問題、この街を持続可能にしていく環境の問題など、5つくらいの分野があります。

ただ、ニセコには海外から乱開発の問題があります。経済が回らなければ、開発が必要という話になりますが、5項目それぞれが縦割りになっていて、基本的に上手くいきません。審議する中で、人の営みよりも環境を優先することを決めないといけません。人の営みを最大化しようとしてきたからこそ環境が置いていかれたわけなので、まず優先順を決めないといけない。人による支配ではなく、環境というプロセスを最優先しますということを宣言しないといけません。

環境と経済というのは利益相反する関係だと勝手に定義されています。

産業創造する、環境を優先した場合に、どういう産業するか。アップサイクルもリサイクルも自然エネルギーもそうですが、そこに施策がないといけません。ただ、今あるものを続けようとしてしまう、新しいことをやってくれる人がいない、どうしても既存事業の追認し続けてしまいます。

「社会観や、世界観が無さすぎですよね」という話をよくさせていただきます。

住民の方々の役に立つということだと「既存住民」の方々に役に立つということになってしまう。そうではなくって、本来は未来の子ども達が喜んでくれる地域にしないといけない、そうすれば声なき声を拾っていくというプロセスを踏んでいかないといけない

SDGsと言われているのに、できていない。いろんなことをやっていく中で、新しいものを作り出していかないと未来はないんじゃないかなぁと思っています。

 

曖昧なものを曖昧のままに捉える、「共同体感覚」を培う

 

競い合うっていうのは勝者敗者がはっきりしやすいし、男性的な本能に対して刺激になりやすい、ただそうした男性的な価値観が上手くいかなくなっているのが今の資本主義社会だと思います。

女性性を活かしながら経営するということ、そうした育成事業をやり始めています。経営をしている女性と一緒に講演をさせていただて話していても、「男性性」を表に出さないといけない、女性にも無理やり「男性性」を発揮させようとすると感じます。女性の活躍はすごく重要なことでもあるにも関わらず、今の経営層にいる「女性性」を活かしていることって、ほとんど今見ることがありません。

チップ、共感、Giftなど若い方や女性には受けれてもらいやすいですが、競争が大好きな男性にはなかなか受けれれられづらい側面があります。

昭和の古い人たちがやってきた「24時間働けますか」って、今やったらアウトですよね。ただ、そうした環境の中で生きてきた、いい面が出ている人と、悪い面が出ている人がいて、悪い面が出ているというのは過去のことが出ている、硬直してしまう、人の心の成長を分析すると、成長体験が長ければ長いほど受けれれられなくなっていくと言います。

人って曖昧なものを曖昧なまま捉えるということがすごく苦手です。ただ曖昧がものがあるんであれば、曖昧なものの中でうまくいくやり方を考える必要があります。

フィンランド行った時にトイレが男女別れていないということを知りました。男性か女性かどっちがわからない時に壁があると、もう1つ壁を作らないといけません。「壁を作って区別する」ということをやってきた中で、壁を無くしていく、それでも大丈夫な状況を作っていくことが大事です。

日本でも男性トイレ側におむつを変えることができないという問題がありますが、トイレを分けているからそれができないということも言えます。

区別するために色眼鏡をかけて見ているということです。「こういう人たちである」とわかりやすく、区別したい。

でも、曖昧なまま捉える。自分と相手の境目って実はないんじゃないか。

今もこうしてたった10人が、集まってコミュニケーションをとっていますが、その時に自分と違うと考えるか、自分と同じものを見つけるか。自律と共同体感覚、繋がっていると考える力、実は共同体感覚が失われているので共助が減っているのではないでしょうか。

私は53年間は横浜生まれ、横浜育ちだったんです。ニセコはすごく厳しい環境で、きた時にまず「車の中に寝袋を入れなさい」「こまめにガソリンを入れなさい」と言われました。なぜニセコで活動しているかというと、共同体感覚というのは繋がっていないと生きていくのが難しいと考えるほど、繋がりを求めていくということになります。そうした厳しい環境の中で、人は助け合います。都会と違ってサービスがないから、自分たちでなんとかしないといけません。地域に行くほどお金で解決することができない、だから共助が働きます。

でも、都会ではサービスが溢れているので、お金依存症になりやすいんですよね

地域は物々交換に慣れているので、等価交換でないことが体に馴染んでいます。物々交換している時にそれが等価かどうか、お返ししなきゃなという感覚になります。何かお返ししたいということが、「お金」になっていると活動を応援することができる、共助のお金を循環させるということを思って、ニセコで活動しています

 

お金は増えないので、循環させる

 

まず皆さんに経済というものを知って欲しいのでお金の原理原則を説明します。

現代のお金というものは、この1万円札はなぜ1万円札かというと「法定通貨だから」となります。ただ、日本銀行は上場企業であるのですが、普通の人は買えないことになっていて、日本銀行の株は皆さんが知らないところで取引されているんですよ。

じゃあ株式会社が出している日本銀行券を皆さんはなぜ信じている?といったときに、法律で日本銀行券に限るって書いてあるから、と思いますか?

実は、そんなことは書いてないんです。

サービスや商品を提供した時にその対価として日本銀行券を出された時に拒否できない=「強制通用力」については書いてあります。ただ、これがお金じゃなきゃいけないということは何も書いていないんです。

債務をベースとした貨幣は、銀行が信用創造するための貨幣と言われています。500円玉、100円玉は政府が発行していて、実はこれは銀行が発行しているものではないので、「公共貨幣」と名前をつける人がいます。

前者は借金をベースとした経済を論じていて、後者については国の信用に応じていると思っていただいたらいいと思います。

借金をすること、それを元に銀行が発行するわけですから、世界の債務残高が増える、借金をする人を増やさないと、経済成長しないというロジックになっています。借金する人というのは資本主義の敗者です。借り入れたら負けというのが、根本ルールです。資本主義の勝者は「貸し付けている人」、そうすると金利をもらえるわけです。片方は資産が増え、片方は資産が減るということです。

何が言いたいかというと、基本的にはお金というのは皆さんが「お金」と思っていたら、お金として流通するということです。

地域通貨もそうです、PayPayやLINEPayなどもそうです。お金の概念というのは多様化していっている、皆さんが「お金」と言っている物の中には様々なものがあって、経済活動をしているということになります。ただ、お金が増えると言うことは原理的にはありません。

ここにいる10人がそれぞれ1万円持ってたとします。10名いて、それが全てだとして、皆さんの月収を100万円にすることはできるでしょうか。お金を増やせるとしたら、一人は手品師。手品師は1万円を2万円にすることができますね。もう一人は日銀と言うことになります。なので今お金を増やすことはできません。では、どうすればいいでしょうか。

100回自分のところを通せば、月収は100万円位なります。お金が「増えた」と言うこと、あるAさんのところに100回オーダーして、単位時間あたりに自分のところを何回お金が通過したか、と言うことがポイントです。なので、誰かが滞らせると、景気は上がらないんです。

お金は増えていないんですが、月収や年収も増やせるんです。この根本がわかると地域通貨の意味がわかるようになります。地域経済を活性化させると言うことはできますが、外部からお金をとってこないといけないとなると、地域通貨の意味は無くなります。

全ての人が月収が100万円位ある状態を作れると言うのが「味噌」です。そのためにはサービスがよくないといけない、さらにみんなが10回くらい欲しがってくれるような強烈なサービスが欲しい。みんなの方にサービスがないと、お金を払うことはありません。循環のスピードが早ければ、皆さんが潤うんです。潤うとは何なのかというと、皆さんが欲しいと思うサービスが手に入ると言うことです。この根本が循環の中で必要です。今は循環の話だけしましたが、物々交換も含めて考えていくと言うことがお金のデザインになります。

そうすると、みんながハッピーになるということが達成できます。

みんなが「あんまりお金を払いたくない」となると、Aさんの売り上げが減ると言うことになります、そうすると半分くらいしか払いたくないとなる、ねぎらせてくださいとなると全体の額が低下することになります。受け取らないと言う行為をしたときに、そこで流れが滞ってしまいます。発想としては、自分のためというだけではなく、お金を循環させることによって次の豊かさや誰かのためになっていくと考える、ということです

 

お金を変えることで、常識を覆していく

 

「お金」というのはありがとうの表現と捉えられたら、今度は次の人に対して使ってください、貯めるものではなく、滞らせないものと捉えられます。

そうすると次の日から心配じゃないですかということが見えてくる。日本は自然災害が多いので備えるという意識が高いです。「預金量」と「幸福度」はある程度までは、相関してしまいます。恐れや不安があると、それを満たすまでに滞らせることになります。

金融機関の預貸率をみると、投資に向かっています。金融機関は、国債を買うか、株式を買っているかになっています。こうなると1万円が1回転しません。

「余計なものまで買うので結果的に社会って悪くなってないですか」というのですが、それは今あるサービスを前提としてからで、お金じゃ測れない大事なものをちゃんとeumoというお金で返せるようにすること、失われそうなボランタリーな活動、誰とも言わずに草刈りをしている人、なかなかありがとうを言えない、それで経済活動ができるのか、少なくとも地域で使えるものを渡せるとしたら、さらに循環していくのではないかと考えています。

環境問題だと自分の代わりに植林してくれる人にお金をわたす、人工林を自然なものにしていくこと、お金にはならないのですが、そこにお金を出していく。空き家問題もそうです、空き家を使ってくれる、代わりにやってくれる人たちにお金を提供することで、循環を作っていくことができるわけです

法定通貨はできるだけためたい、なるべく安くしたいとなってしまいますが、地域通貨は循環させることが目的だと発想を変えてもらうわけです。

それを切り替えることができるのがすごく大切です。お金を変えることによって街が豊かになります。ただ買いたいものがない、素敵なサービスがないとなると循環しなくなります。地域の中で、そうしたサービスを生み出していくことを同時にやっていかないといけない。

経済がわかってくると、「お金は循環させていかないといけない」ということがイメージとなっていくわけです。Giftというのは相手に儲けさせる行為、より多くお金を循環させていく、その人が滞らせてしまう人ではいけません。コミュニティの外で使ってしまうと、また誰かが外から持ってこないといけないということになります。コミュニティ内で魅力的なサービスや商品を作ることができるか、そうしたサービスを提供すること、それができる人づくりが重要になってきます。

では、「ボランティア」とは何なのか。誰かがお金を提供するというものが直接的にその人たち(受益者)、便益を得て対価として払うということになりますが、その人からはお金はもらいづらい。ただその人が払うという形ではなく、違う人が払うとなるとボランティアではなくなるということになります。「お金」という物の定義を変えると、ボランティアと営利な活動の区分が変わるということになっていきます、だってお金になる行為になってしまうからです、なので発想になる。

お金がボランタリーなものと、そうでないものの境目を作っているということです。

付加価値を提供したことに対して払える人がいるのか、本人が払えるのか、違う人が払うのかという違いしかないと思っています。eumoは、お金を変えることでそれが実現できると考えています。

預金量が多いというのは不安やおそれに基づいているとしたら、幸福度は上がって来ませんよね。備えないといけない国だからということは歴史的な観点から言えると思います。ただ、日本に生まれて不幸なのかということになるかというとそうではないですよね

法定通貨は決済、つまり決めて済ませる、お金を使って関係性を終わらせる、なので物々交換の方がいいという論者もたくさんいますが、「仲間を作り上げていくお金」という発想になっていくことが大事です。

効率を上げるために、相手が見えない方が効率が上がり、お金で儲かる。それで関係性が壊れてきた、というのが資本主義です。「見えざる手」にまかせて来ましたが、このままいくとまずいということに気づいてしまった。お金のデザインをやりなさないといけないということに気づいていて。

取り戻さないといけないものは、関係性じゃないかと思います。お金が変わることで、常識を覆していく、eumoはそこにチャレンジしています。

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